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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第32話 お兄さんの読み聞かせ会


ルネ先生に宿題を渡されたため、今日の残りの時間は図書館で知識を増やすことにした。動物たちは連れて行けないだろうから、みんな留守番だ。



朱色の傘を差し袋に入れた状態で背負い、シナツ町行きの汽車に乗って一人で揺られる。



図書館には調べものでよく訪れるからか、受付のお姉さんに顔を覚えられてしまった。声をかけられるのはいいけど、食事に誘うのは気まずいからやめてほしい。


今日もにこやかに手を振られる。


会釈だけして、足早に児童向け絵本の棚へ向かった。



背表紙を指でなぞってみる。


うわ、懐かしい。『一休さん』だ。

……さすがに、これを再現するのは無理だけど、久しぶりだし読もうかな。



棚の端で絵本を手に取ったとき、小さな足音が近づいてきた。



「ねー、お兄ちゃん。何読んでるのー?」


「え? あー……一休さんだよ」



五歳くらいの、髪をお下げにした女の子がやってきた。

周りに親らしい大人は見当たらない。遊ぶものがなくて退屈しているのかな。

少し相手してあげよう。



「……読んであげようか?」



そう声をかけると、女の子の顔がぱっと明るくなった。



「うん!」



小さい木の椅子を引きずって持ってきて、目の前に座る。


あ、紙芝居のように読む感じか。


絵本を見えるように持ち、一枚開いた。



「――むかしむかし、ある寺に、ケチな和尚さんがいました」



『水あめの毒』


寺の和尚は甘いものが大好きで、いつも一人で水あめを舐めており「これは子どもが舐めると毒だ」と嘘を言っていた。

ある日、和尚が出かけたあとに、みんなで水あめを全部舐めてしまう。

一休は茶碗を割り、和尚が帰ってきたときに「大切な茶碗を割ってしまったので死のうと思って毒を食べたが、まだ死ねない」と言った。



「……和尚さんは何も言えなくなったとさ。おしまい」



じつに機転が利く人物だ。俺もこれくらい賢く立ち回りたいものだ。


気づけば隣にも後ろにも、小さな影がちらほら集まっていた。まるで読み聞かせ会でもやっているような感じに。



読み終わったとき、子どもたちの盛大な拍手に思わず肩がすくんだ。


なんだろう、妙に気恥ずかしい。


別のところに行こうとしたらもう一冊渡された。


また一休さん……絵本の順番からすると『虎の屏風』だったけど、それをとばして『刀のごちそう』を持ってこられてしまった。


もう一冊だけだと伝え、読み聞かせ会二冊目に突入した。



「――むかしむかし、お殿さまが、一休さんを城にまねきました」





読み終わると、なんとなく充実感があったが……これ、ルネの宿題に関係ないな。

うん、まあいいか。気晴らしってことで。



とりあえず、子どもから離れて写真集の棚に向かった。

前来たときに立ち読みした『高山 風景写真集』がある。


その裏側の棚には、魔法を使っている場面を写真に収めたものがたくさん置いてあり、持てるだけ持って席で読んだ。



写真に写る水は、流れのひと筋ひと筋が光を受けてきらめいていた。


こんな精密な動きを、自分の魔法で再現するのは……どう考えても無理だ。そもそも属性魔法ができないけど。

こんな風にできたら、どれだけ自信がつくだろう。



自分に近しい魔法を使っている人がいないか調べたけど、やはり見つからない。


一冊目をめくり、次の写真に目をやる。


どれも手ごわそうだが、頑張れば再現できそうなものもある。



気づけば二冊、三冊と手を伸ばし、読み終えた頃には棚一列が空になっていた。



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