第31話 慰めの代償
ルネの言う通り、物体を作るのはなんとかなりそうだけど、ひとつ気になることがある。
「前に……見たことのないものを魔法で再現したことがあるけど、それはなんでできたんだ?」
オオツチ町の旅館で、実験と称して魔法で直線の虹を作り出したことがある。まるで、絵具を塗り重ねたような不自然な線だった。
「想像が難しくないようなものは作れているみたいだね。心と魔力が一致したら、なんでもできる。うなぎ掻きとか槍を飛ばしたりできるのも、それが理由」
あれってそういうことだったのか。
薄ら疑問には思っていたけど、指を振ったら飛んでいくし、まあいいかと思っていた。
先ほどの移動魔法がうまくいかなかったのは、“歩いた方が早い”という思い込みのため、魔力がそれを汲んで発動しなかったから。
考えを整理するように、顎に手を添えて首を傾げる。
しかし……現代の魔法は魔術と違い、願いや祈りを必要としないと聞いたが、結局気持ちの問題になるのか。魔法の元は魔術だというから、多少なりともその影響があるのだろう。
……それなら、俺が魔法を使うたびに『本当にこれでいいのか』と不安になっていたのも、反映されていたのかもな。
「そうだよ」
こら。勝手に頭の中を覗いてくれるな。
なんにせよ、物体はともかく、現象を魔法で起こす練習をしていけたら、技術は向上できる。これで少しは自信もつくだろう。
「ルネって物知りだね。知らないことはないの?」
「一度見たものの過去や思考、物体の構造がわかる能力だからね。ぼくが見たものであれば、情報として提示してあげられる。でも、見たことがない人物のことはわからない。今回のユウナの能力のことは、今まで例がなかったから、向こうの次元で調査しないとわからなかった」
なるほどね。
……ルネが疑問に思ってくれたおかげで、俺の能力についての謎が解けた。
この子には召喚したときから、ずっと助けられてばかりだ。ルネに『いてくれてよかった』と思われるくらいには、強くならないと。
白い頭から下りたルネは、ぱたぱたと羽を動かして、伸びをするような仕草を見せた。
「へー。じゃあ、隠しごととかルネにできないねえ」
「あい。個人情報になるから、それらをひけらかして脅迫の材料にはしないけど」
よかった。性格のいい子で。
……あれ?
ちょっと待て……過去や思考がわかるってことは……
一人でしてるところとか見られたってこと?
頭が一気に沸騰しそうになった。頭のてっぺんまで熱くなって、視界が赤く染まりそうだった。
え、ええと……あの妄想も?
あの、かなりやばめのやつも……?
「うわあああああ!!」
嘘でしょ!?
全部見られた!?
俺の……っ、ええ!?
いや、ひけらかしたりしないって言っていたから大丈夫だよね!?
思わず声を上げた俺に、ソラが目を丸くしていた。対照的に、カラスの目は細められる。
「それは……せめて、ぼくがいないときにしてね」
「それって?」
「ああああ! はい!! わかりました!」
ソラの耳をつまんで、これ以上聞くなとばかりに押さえ込んだ。
よかった。性格のいい子で……。
本当に、よかった……。




