第30話 希望の光
「これでユウナも、自分の魔法と向き合えるようになったね」
「……そうかもしれない」
魔法を使えるようになったときから、周りの魔導士と違うこの力は、異物のように感じていた。
どれだけ練習しても、周りと同じようにはならない。自分だけが異端者みたいで、どこか居場所がないような――
でも、まあ、シャーマンの正しい力の使い方ではないけど。
これでやっと、本当の意味で前に進める。
安心したせいか、体の力が抜けて、その場に座り込んだ。
途端に膝の上に乗ってくる白猫の背を撫でる。
「……おまえは、気楽でいいよな」
ソラはのんきに喉を鳴らしていて、その振動が手のひらに伝わる。その温かさに、ふっと肩の力が抜けた。
あとは、何か聞きたいこと……あ。
「魔力欠乏症になるとき、自覚症状なしで倒れているんだけど……それって神の力を使っている影響?」
「いや、単純に、ユウナの集中力がすごくて体調不良に気づいていないだけ」
「そんな理由かよ。ちょっと情けないな……」
回復魔導士の那智に言ったら引かれるな。黙っておこう。
「じゃあ、新たな門出を祝って、ユウナに宿題出そうかな」
「いきなりだな……」
何を言われるのだろう。
表情を変えないせいで、この子の考えは読めない。
「その特殊な魔法で、何ができて何ができないのか、理解しないといけない。なので、これからはもっと多くの絵本や写真を見て、それを再現できるか試してみること。これが宿題」
超自然的な存在と、俺の魔力の相性を調べる必要があるってことか。骨が折れそうだ。
でも、どこかわくわくしている自分がいた。
今までずっと、何ができて何ができないのか曖昧なまま、ただ不安と向き合ってきた。でも今なら、もっと自分の力を信じられそうだ。
「それと、魔法を使うときにごちゃごちゃ考えすぎ。製造工程を思い浮かべなくても、ユウナなら完全再現できる。金塊がほしいと思えば、不純物のない純粋な金が作れるよ」
言霊を教えてもらったときに、霜月先生にも同じようなこと言われたな。
ということは、魔法を発動する速度が上げられるってことか?
唯一の弱点と言っていいそれが改善できるのか?
曇っていた空が晴れたような気分だった。
唇の端が思わず緩んだ。長年の悩みが晴れていく。
……こんな感覚、いつぶりだろう。
「……やっと、やっと俺にも希望が見えた」
思わずつぶやいた言葉が、部屋の静けさに溶けていく。
「よかったね」
ソラのその声に、小さく笑みを返した。




