第29話 力の変換
「ぼくが集めた情報によると、ユウナはシャーマンの能力の使い方ではなく、属性魔法と同じ使い方をしているのがその原因だった」
「……つまり、普通の魔導士が自然の力を変換して魔法を使うみたいに、俺は神様の力を変換しているってこと……?」
「そうなるね。自然そのものを創造した者たちの力を、魔法として使っているのがユウナの力の正体だよ」
「そんなことしてる人間初めて見るから驚いてる」と、カラスは言う。
……まあ、俺が一番驚いているけど。
しかし……。
「……神様の力を盗んでいたのか……」
自分で言っておきながら、喉がひゅっと鳴った。
とんでもないことをしているんじゃないか?
冷たい汗が背中を伝うのを感じた。
自分がしてきたことは、そんな大それたものだったのか。
ルネの足元におとなしく座っていたソラが、首を傾げた。
「……それって、怒られないの?」
ソラの言葉に、胸がちくりと痛んだ。その痛みが、じわじわと胃のあたりに広がっていく。
普通なら、怒りを買って当然だ。いや……最悪、その力で――。
キリキリと痛む胃の部分を押さえた。
「……でも、もし許してくれているとしても……俺は、知らずに人のものを盗んでいたのと同じじゃないか」
ちらと、羽をついばむルネを見る。俺の意図に気づいたのか、こちらに向き直った。
「一応、意思疎通できる神にだけ話してみたけど、とくに気にしていないようだった。どちらかというと、初めての経験だからか、みんな楽しんでいるみたい」
さすが神様、懐が深いな……。
「だから気にせず、そのままでいいよ」
そう言ってくれるとありがたい。心が軽くなるのを感じる。
まあ、それもあるけど。
母親が能力の使い方を伝授してくれていたら、そのまま一般のシャーマンと同じ力になっていたのか。
この国に来て、属性魔法の仕組みを学んだせい……と言えば聞こえは悪いが、特殊な使い方で馴染んでしまったのだから、これはもう、どうすることもできない。
ルネが言っていたことを思い返すと、一つの疑問が浮かんできた。
「なあ、ルネ……自然そのものを創った者の力を使っているってことなら……自然の力を操るのと一緒じゃないのか?」
力の出処が違うだけで、属性魔法だって使えるはずでは?
カラスは首を横に振る。
「まったく違う。自然の力を使うのが属性魔法で、ユウナは神や精霊の力を使う。ユウナの魔力と相性が合わないから、自然の力を使えないだけ。魔法の威力も、内容も一般魔導士の比じゃない」
……そうなんだ。でも、それが本当なら……少しでも、この力に意味があると思ってもいいのだろうか?
肥大化の薬を投入されたうなぎや鹿に、ほかの人の攻撃が食らわず、俺の魔法が効いたのもそれのおかげかもしれない。
「……じゃあ、俺の魔法って、どのくらい強いんだ?」
「たとえば……一般の魔導士が火球を放つなら、せいぜい家が貫通するくらい。でもユウナがやれば、家の周りも消し飛ぶだろうね」
「……は?」
あまりの差に、言葉が出なかった。思わず、自分の手をじっと見つめる。
今まで何気なく使っていた魔法が、そんな威力を秘めていたなんて――
こんな力、持っていていいのか?
いや、今まで通りにやればいい。神様だって許してくれたのだから。
「よかったね。ずっと魔法のことで悩んでいたし」
白猫の言葉に頷きを返す。
「ああ。胸の突っかかりがやっと取れた気がする」
体の力が抜け、思わず息を吐き出した。
でも、そのあとからじわりと込み上げてくるのは――申し訳なさ。ずっと見えない誰かの力を借りていたんだ。
「……一応、感謝はしておこうかな。見ていたら、だけど」




