第27話 馬の骨
なんとなく、だめな自分に絶望して下を向く。
「見たことがあるものって言えば……村に海も作れるかな?」
ソラが、俺の足の間から顔を出し「にゃあ」と鳴いた。まるで、俺の落ち込みなんて気づいてもいないみたいに、無邪気な声で。
というか、まだそれ、あきらめてなかったのか。
ワタツミ街でソラが『魚食べ放題したいから海作って!』と、楽しげに言っていた当時を思い出した。
「それは無理かな。地形を変更するところから始めないといけないし、ユウナは水を作れない。海水の成分を理解していれば海水“もどき”は作れるけど、風で波は起きないし温度も変わらないものができる」
いつぞやお嬢ちゃんの部屋で火を起こしてみたことが、頭をかすめた。
熱はあるが、火のように揺らめかず、煙も出ない。それは火というより、まるで燃える“絵”だった。
現象に関して魔法で作るのは、さっぱりだめだ。
ソラの頭の上に飛んで移動したカラスは、自分の体をついばんでいる。
――そういえば同じ日、お嬢ちゃんが『ご両親どちらかの出身国に、利他さんと同じ魔法を使う人がいるかもしれませんね』と言っていたっけ。
学校の図書室には、それらしい本がなかったと彼女には謝られた。俺も暇を見て本屋を見て回っていたけど……目ぼしいものはなかった。
だが、今はルネがいるじゃないか。
――きっと、ルネなら何か知っている。
その思いが、心のどこかで焦りの火を灯した。
この力にちゃんとした名前があるのなら、知りたい。それにより、能力を理解し、うまく扱えるようになることで次の段階に進める気がした。
お嬢ちゃんの魔術も解けるかもしれない。
「……ルネ」
俺は声を絞り出した。
喉が渇く。
知らないうちに手が汗ばんでいた。
「俺と同じ魔法を使う人間は、どこかの国に存在するのか?」
万が一、母親の国に同じ力の使い手がいるのなら――
この力の正体がわかるのなら――
唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえた。
「同じ魔法を使う人間は――」
ルネは少しだけ目を伏せて、ぽつりと言った。
「いない」
その一言が、鋭く心に突き刺さる。
返事を聞いた瞬間、時間が止まったように静まり返った。周囲の音が、すべて遠く感じられる。
自分だけが、世界から切り離されたような感覚がした。




