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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第27話 馬の骨


なんとなく、だめな自分に絶望して下を向く。



「見たことがあるものって言えば……村に海も作れるかな?」



ソラが、俺の足の間から顔を出し「にゃあ」と鳴いた。まるで、俺の落ち込みなんて気づいてもいないみたいに、無邪気な声で。


というか、まだそれ、あきらめてなかったのか。


ワタツミ街でソラが『魚食べ放題したいから海作って!』と、楽しげに言っていた当時を思い出した。



「それは無理かな。地形を変更するところから始めないといけないし、ユウナは水を作れない。海水の成分を理解していれば海水“もどき”は作れるけど、風で波は起きないし温度も変わらないものができる」



いつぞやお嬢ちゃんの部屋で火を起こしてみたことが、頭をかすめた。


熱はあるが、火のように揺らめかず、煙も出ない。それは火というより、まるで燃える“絵”だった。


現象に関して魔法で作るのは、さっぱりだめだ。



ソラの頭の上に飛んで移動したカラスは、自分の体をついばんでいる。



――そういえば同じ日、お嬢ちゃんが『ご両親どちらかの出身国に、利他さんと同じ魔法を使う人がいるかもしれませんね』と言っていたっけ。


学校の図書室には、それらしい本がなかったと彼女には謝られた。俺も暇を見て本屋を見て回っていたけど……目ぼしいものはなかった。


だが、今はルネがいるじゃないか。



――きっと、ルネなら何か知っている。



その思いが、心のどこかで焦りの火を灯した。


この力にちゃんとした名前があるのなら、知りたい。それにより、能力を理解し、うまく扱えるようになることで次の段階に進める気がした。


お嬢ちゃんの魔術も解けるかもしれない。



「……ルネ」



俺は声を絞り出した。


喉が渇く。

知らないうちに手が汗ばんでいた。



「俺と同じ魔法を使う人間は、どこかの国に存在するのか?」



万が一、母親の国に同じ力の使い手がいるのなら――


この力の正体がわかるのなら――


唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえた。



「同じ魔法を使う人間は――」



ルネは少しだけ目を伏せて、ぽつりと言った。



「いない」



その一言が、鋭く心に突き刺さる。


返事を聞いた瞬間、時間が止まったように静まり返った。周囲の音が、すべて遠く感じられる。


自分だけが、世界から切り離されたような感覚がした。



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