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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第26話 無理難題の再現


さらに一時間ほど様々な方法で試してみたけど、結局うまくいかず。


……昨日の今日でルネに頼るのは少し気が引ける。だけど、これ以上は俺の手に余る。


――いや、もう少し試してみるか?


そう思い直して、今度は言霊で試したが、やはり期待通りにいかなかった。



なんとなく襖を開けると、陽光が畳に斜めの影を落としていた。埃っぽい空気の中に、ひんやりとした気配が漂っている。



「……だめだ。仕方ない、頼るしかないか」



呼び出しに応じてくれたルネ先生から、「ユウナは自信と想像力が足りない」と、言われた。



「例えば寝室に向かうとき、ユウナは“歩いて行く”のを当たり前と思ってしまっているから、魔力が混乱して魔法にならない」



頭の中で、自分が寝室までの廊下を歩いている映像が浮かぶ。途中で庭を見て……何気ない日常の情景が、まるで染みついた癖のように脳裏をよぎってしまった。


逆に、瞬きの間に自分が移動している状況はさっぱり出てこなかった。



「……おっしゃる通りです」


「それに、長距離移動は基本、傘で飛ぶか汽車を使っているよね。ユウナは無意識に、そのどちらかの方法をとろうとするから、転移魔法や影移動に意識が向かない。汽車は一生使わないって心に決めたら、転移くらいできるはずだよ」



つまり……認識の甘さが、移動する魔法を阻害しているってことか?



俺の魔法は絵や写真、実際に存在するものなど、見たことのあるものの再現だ。


精霊が使った移動魔法をこの目で見ていないから、どうやって表現したらいいのかわからない。



闇属性魔法の影移動も、『なんだよそれ?』と思っている。その疑心が魔法にならない理由だろう。



「でも、一度見たものは完璧に再現できているね。もし、影移動したいとなると……ユウナの場合は、“影の中でどういう動きをしているのか”をその目で見ないと発動できないだろうね」



……なんだろう。今すごく腑に落ちた。

物事の筋道を辿らないとわからなくなるんだ、俺は。


影に入る……どうやって?


影の中で身体はどうなっている?


周囲は暗く見えているのか――



実際に目にしたものなら、その動きを頭の中で再現できる。でも、見たことのないものは、想像することすらできない。


……これじゃあ、魔法が発動するはずがない。



……ああ、これは俺の魔法の問題じゃない。俺自身の問題だ。


頭の奥が、じんと痛む。


これをどうにかしないと、形がはっきりしない曖昧なものは、すべての動作を見ないと一生使えない。



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