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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第25話 魔法の再現


せっかく起こしてもらったし、お嬢ちゃんが作ってくれた朝ごはんでも食べようかな。


今日は予定がない。久しぶりの休日だ。




***




食事と掃除を終え、玄関横の空き部屋にきた。この部屋はもともと、呉服店を継ぐ見込みで、着物とかその他の道具を置こうと思ってできた場所だ。


でも結局使われることなく、お嬢ちゃんの化粧道具や姿見くらいしかない。一番物のない部屋だから、何かするにはちょうどいい。



ここで、大臣が使役している精霊が使ったものとされる魔法を、俺の力で再現できるかどうかやってみようと思い立った。


実験というか、暇つぶしで。


これを閃いたのが、昨日……というか今日の二時頃。



ルネに詳しく聞いてみたところ、研究所で行方不明になった八名は、()()()()()()()()に飲み込まれ、離れた場所へと移動したらしい。その場所が、本省にある地下の研究室。



「闇の力を操る精霊の仕業で間違いない」とのこと。



精霊も人間のように得意分野があるそうだ。

ちなみに人間が使う“闇属性魔法”と、精霊が使う“闇魔法”は別物と言う。



俺は闇属性魔法は使えないから、それ以外で移動方法を考えないと。



エルとビットの葉っぱでできた羽を見て、ふと思った。


この子ら、瞬きする次の瞬間には現れるんだよな……あれって瞬間移動じゃないか?

風を使わず、瞬間的に長距離移動することができる妖精二人の能力なら、属性魔法じゃないし、案外再現できたりするのでは?


これができるようになれば、一生切符代払わずに済む。最高じゃないか。



新しい能力が得られる予感にそわそわしながら、妖精に質問してみた。



「それはユウナでも無理ね」



エルは困ったような顔をする。



「できないものなのか? 人間だって、風属性魔法で飛んだりできるのに?」


「いい? そもそも、人間と精霊の魔力や体は完全に別物なのよ。わたしたちみたいな移動魔法を使ったら、ユウナの体は分裂通り越して消滅しちゃうわ」



こっわ!


今の一言で、冗談でも試してみようとは思わなくなった。


「あ、でもね」とビットが、お菓子缶からビスケットを引っ張り出しながら話し始める。



「精霊が人間を魔法で保護している場合は、瞬間移動できるんだよ。まあ、そのときは、精霊がそばにいないとだめだけど」


「なるほどね……」



精霊の力を借りて移動したいわけじゃないからな……

自分が消滅しないためにはどうしたらいい?


いや、別に瞬間的に長距離を移動したいわけではない。ただ、念じたら違う土地に着いていてほしいだけで。


いろいろ考えていたけど、夜中だったということもあって、いい考えは浮かばなかった。





――とりあえず、闇属性には影から影へと移動する者がいるというので、それを俺なりの魔法で再現してみよう。


……移動する予定の箇所に印をつけておき、その印の上に出現できるのではないか?

まるで何かの遊びみたいだな。これなら、俺でもできるかもしれない。



試しに、紙に『✕』を書いて寝室に置き、そこに立つ自分を想像する。


……移動していない。



影同士を繋げる想像をして、再度試す。


だめだった。



闇属性じゃないとできないのか?



部屋に侵入してきた白猫がいたので、ソラが寝室の『✕』印の上に移動した姿を思い描き、魔法を使った。


……だめだこれは。

やっぱり俺には無理なのか?



頭ではわかっているのに、心だけが先に急いていく。焦りが、じわりと胸の奥に広がる。


――間に合わない。お嬢ちゃんを助けるために必要な想像力が、俺にはまだ足りない。



「どうやるんだ、これ」



自分でも驚くほど、声が震えていた。



「うーん、ルネに見てもらった方が早いんじゃない?」



――それはそうなんだけど。

ルネに頼るのは簡単だ。でも、それじゃ俺がここまでがんばってきた意味がない。



「もうちょっとやってみる」



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