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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第24話 仲夏の戯れ


襖の隙間から差し込む光がまぶしくて、思わず目を細めた。重たいまぶたをこじ開けた先に、お嬢ちゃんの顔があって――心臓が跳ねた。



「……ユウナさん」


「うわっ」



思わず声が出た。


今、寝顔を見られたよね?

……やばい、よだれとか垂れていたらどうしよう。

みっともない顔をしていなかっただろうか?



そんなことばかり考えたせいで、なかなか頭が働かない。寝起きに驚かされたような緊張感と、鈍い思考回路で混乱しながら、なんとか体を起こす。



彼女が着ている制服は夏仕様になっていた。


白地に黒の襟と袖、黒いネクタイ。そこに薄花色の線が二本。

夏用のセーラー服も、よく似合っていた。



「……おはよう。えーと……どうしたの?」


「おはようございます。起きてこられないので、具合でも悪いのかと」



枕元にある時計を見ると、目覚ましを設定せずに寝てしまっていたらしい。


この子にいらぬ心配をかけてしまった。みんなと楽しくお喋りしていて、三時頃まで起きていたせいだ。



「夜中まで仕事してたんだ」


「あ……起こしてすみません」



ただの夜更かしで寝不足なんて、みっともなくて言えない。

……何を格好つけているんだか。



自嘲気味に笑い、立ち上がった。



「ごめん。朝ごはん作らせたね」


「いえ。慣れてるんで、かまいませんよ」



申し訳なさに心が痛くなった。


それにしても……忘れた頃にやってくる畠山め。

あいつのせいで、お嬢ちゃんはどれだけ嫌な思いをしたか。


春頃、あいつに髪を鷲掴みにされたときの、この子の怯えた顔が頭に焼きついていて、思い出すたびに苛立ちが込み上げる。気づけば、自分の頭をがしがし掻いていた。


はー……落ち着こう。



彼女の髪をすくってみた。


艶のある、綺麗な栗色の毛だ。このままでもいいけど……。



「時間、あるよね。髪結んであげようか」



台所にある椅子に彼女を座らせた。


後頭部の高めの位置で髪を一つにまとめる。指先に意識を集中し、めん棒の先端だけを高温に保つ。

火傷をさせないよう、細心の注意を払いながら、毛先を一束ずつ巻いていった。


前に作った、黒色に銀の刺繍が入っているリボンを結び目に巻きつけて完成。


台所の棚の奥に眠っていためん棒に魔法をかけ、高温にし、髪を巻くときに使ってみた。さすがにもう料理には使えない。



八意やごころ高校は髪色、髪型に関しての校則は存在しないから、どういう風にしたって言われない。

若気の至りか、前髪と襟足部分以外刈り込んだ同級生がいたが、今は奇抜な髪型をやめたと聞いた。



「わあっ、ありがとうございます!」



お嬢ちゃんは手で後ろ髪をふわっと持ち上げて、きらきらした瞳でこちらを見た。



「すごい器用ですよね。わたし、こういうの苦手で」



学校に行くときいつもそのままの髪型だったから、それがいいのかと思ったら……そういう理由か。

これに関しては練習しないとどうにもならないし、興味もなかったらそうなるだろう。



「夏場は?」


「適当に縛ったり、髪を切ったり」



……結構雑なんだな。



「綺麗な髪なのに。せっかくだから、もう少しだけ気にしてみたら?」


「ふふっ。そうですね。わたしの髪が綺麗なのは、ユウナさんのおかげですし……ちょっとだけ気にするようにします」



またこの子は。人たらしめ。


そんな風に考えていたら、思わず口元が緩んだ。


いや、でも……それだけでいいんだよな、なんて。

おっと。そろそろ家出る時間か。



「そろそろ行く時間かな。気をつけていってらっしゃい」


「いってきます!」



髪を揺らし、かわいい笑顔を振りまきながら、颯爽と行ってしまった。


今日も一日、いい日になるといいね。



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