第22話 姿の行き違い
そういえば、ルネを召喚したとき、魔力欠乏症になってしまったけど……あれはなぜだろう?
精霊は己が魔力を保持しているため、召喚者の魔力を使わなくても活動できるはずだ。
「ユウナがすぐに名前を付けてくれていたら、ぼくの魔力でこの次元に留まることができた。名前をもらっていないと、召喚者の魔力でこの世界に留まるしかない」
初召喚時、姿が子どものカラスだったのもこれが原因だと言う。名前を付けられてやっと術者が望む姿になれるのだとか。
「じゃあ、向こうにいたとき、ルネには名前がなかったの?」とソラ。
「真名はあるけど、呼称が必要。呼称をつけることで、その姿が召喚者の望む姿に変わる」
「……つまり?」
「わかりやすく言うと、あだ名みたいなもの」
「ぼくはユウナと契約してないけど」と、ルネは二回も言った。
研究所にいたヘルハウンドは真名で、あの姿は召喚者が望んだ姿だということだが……目玉四つもついた犬を考える人間とは話が合わない気がする。
「まれに、苦手なのに絵を描いたり、頭の中で姿を思い描くのが苦手な召喚者がいる。そのせいで、精霊がうまく具現化できなくて、変わった姿になる者もいる」
「だから……」と、ルネは肩を落とし、ぽつりとつぶやいた。
「ヘルハウンドのこと、不気味に思わないでほしい」
ルネの声が、ほんのかすかに震えていた。
つまり、ヘルハウンドと契約した人は、普通の犬を召喚したかったのかもしれないが、想像するのが下手でその通りにならなかったと。
……ヘルハウンドがだんだんかわいそうに思えてきた。
しかし……契約か。
やっぱり、友人関係みたいなものではなくて、この子とは契約した方がいいんじゃないか?
今後、いろいろ問題が出てくるかもしれないのに。
「ルネは俺と契約しなくても大丈夫なのか? こっちに来るなら契約しなくちゃいけないとか、そういうのはないの?」
「そういう決まりはない。ぼくはユウナと契約する気はない。契約関係が悪いとは言わないけど、その上で成り立つ絆をユウナと繋ぎたくない」
なにこの子。めちゃくちゃいい子じゃないか。
ルネの言葉が胸に突き刺さって、じんと熱くなった。
なんだろう、息をするのが少し苦しい。こんなにまっすぐな子が、俺のそばにいてくれるなんて。
あれやこれやと会話していると、庭の方から、ふわりと青白い光が漂ってきた。
あくびをしながら近づいてきたのは、エルとビットだ。
「あら、ユウナ。めずらしく起きてるじゃない」
声の主はエルだった。あまりにも綺麗で、まるで星屑が声を出しているみたいだな、なんて思う。
「ああ、ちょっと研究所まで散歩にね」
両手を差し出すと、それぞれ手のひらの上に乗り込んだ。
ソラは膝に乗っているし、何かの仏像にでもなった気分だ。




