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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第15話 期待の薫衣草


「おかえりー」



愛猫が玄関に迎えに来てくれた。


締めつけすぎないようにソラを抱きしめ、頬をそっと彼の体に寄せた。体の緊張がふわっと溶けていく。


癒しだ。極楽がここにある。



ずっと張り詰めていたものが、ようやくほどけた気がした。



「疲れた……いろいろと……」


「よしよし。いい子ねー」



ソラを連れて脱衣所まで行き、浴衣と帯を脱ぎ捨てて部屋着用にしている浴衣を身につける。


寝室の座卓に、玲さんにもらった資料を広げて再度目を通した。



膝にまるくなる猫の背を撫でながら資料を読んでいたとき、唐突に電話が鳴り響いた。走ってそれに出ると、なんと電話の相手は、さっき別れたばかりの官房長官。


……えっ、もう?

さすが仕事が早い。

ここまで動いてくれるとは……。



『弘清くんが、今はまだ会えないと言っていてね。いつか必ず時間を作るから、それまで待ってほしいそうだ』


「……そうですか。わかりました」



電話を切ったあと、どっと肩の力が抜けた。


……やっぱり。すぐに会えるなんて、最初から期待していなかったつもりだったけど。

でも、声が聞こえる距離にいるとわかってしまえば――待つのも、少しだけつらくなる。


でも、弘清さんが『いつか必ず時間を作る』と約束してくれたなら、それを信じるしかない。



飯島が言っていた話を思い出す。


――死んだ人間に精霊を入れる研究。



それをやらされているのだとしたら、大臣は精霊とやらに、何をさせるつもりなのだろうか?

とにかく、お嬢ちゃんに会うのを嫌がっているわけではなさそうだから、今は彼を待とう。



寝室に戻る前に、掃除用具に魔法をかけて家中の掃除をしてもらった。

箒は、俺のうしろをついてくる。ソラのまわりをちょろちょろと動き回り、落ちている毛を追いかけながら掃いている。


ソラが「にゃ?」と不満げに見上げると、箒は慌てて別の方向に逃げていった。



「あれ? 魔法、前より早く発動するようになったね」


「そう? 慣れとか?」



自分じゃ気づかないものだな。


毎日掃除用具に魔法をかけていたおかげかな、と妙なところで成長した自分を褒めて広縁ひろえんの方に向かった。

ひょうたん型の小さな池の周りを囲っていた石の種類が変わっている。昨日はまったく気づかなかった。


その奥には、薫衣草ラベンダーの紫が広がり、やわらかな香りが湿った空気に漂う。


満開になったら乾燥させて、花束にして廊下に飾ろう。お茶にするのもいいかもしれない。


庭を眺めながら柱に寄りかかる。ほっと息をついた。



……まだやるべきことは山積みだ。

でも、今は少しだけ、こうしていてもいいだろう。



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