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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第14話 記憶の手がかり


抹茶を吹き出しそうになり、慌てて口を押さえた。



――昨日?


霜月弘清と喋った?


どこで?



湯気の立つ茶碗の向こうで、景色がかすかに揺れて見えた。

頭の中が一気にざわつく。深く息を吸って吐いた。


――落ち着こう。こういう話は冷静に聞かないとだめだ。


乱暴になりかけた呼吸を整え、抹茶碗を静かに置く。



「……新聞では、霜月先生と息子さん、それに研究員たちが行方不明とありましたが」


「おお、そうだったね。でも弘清くんは、省庁の地下にある研究室にいるそうだよ」



思わず聞き返す。



「……地下に研究室なんてあったんですか?」



霜月先生たちは初めそこで勤務していたが、設備が足りなくて、あの離島に引っ越したそうだ。



「関係者以外の立ち入りは禁止でね。何をしているのかは知らないのだよ」



そう言って、丁寧に甘酒を飲みきった。



「霜月先生とほかの研究員もそちらに?」


「いや、それがわからないのだよ。一度も顔を合わせていないし、弘清くんも教えてくれなくてね」



だが、弘清さんが生きているとわかっただけでも進展があった。


先生と研究員もおそらくその研究室にいるのだろう。

……軟禁という形で。



霜月弘清が人との接触を許されている理由は不明だけど、妹と会わせる機会を作れる可能性がある。そうなればお嬢ちゃんは、兄がいたことを思い出せるかもしれない。



「もし可能でしたら、妹の優香さんと会えないか、聞いていただいてもよろしいですか?」


「戻ったら聞いてみるよ」



お嬢ちゃんの記憶が戻る手がかりになるだけじゃない。彼女が記憶を失った理由、霜月先生や研究員たちの失踪の真相。それを知るためにも、絶対に会わせないといけない。


真実が暴けるかもしれないという期待に、興奮している自分がいた。




***




ごちそうになり、店の外に出た。


今日、本部に来てよかった。この人から有益な情報を得られたのだから。



姿勢を正している鈴木官房長官に、深く頭を下げた。



「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました」


「いやいや。こちらこそ」



「また連絡する」と言われ、そのまま別れた。



官房長官がある程度離れていったところで、大きく伸びをしてから人の少なそうな場所に向かう。


今日は汽車に乗るのはやめて風に当たろう。



背負っていた傘に魔法をかけ、空中に舞い上がる。



……記憶にない兄に会わせるとなると、お嬢ちゃんは困惑するだろうか?


ついたため息は向かい風に流れて消えた。


でも、たとえ戸惑っても――彼女の過去を取り戻せるなら。俺は、その手を引く覚悟がある。



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