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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第10話 官僚御用達の喫茶店


官房長官を待たせるのも悪いので、小走りで本部を出て、住宅地の一角にある『茶房 和庵なごみあん』に向かった。


ここは、高級町家喫茶である。


外観は黒色を基調とし、素朴ながらも洗練された雰囲気が漂っている。



官僚御用達らしく、庶民が入るには敷居が高すぎる。佇まいからして、『今日、暑いから冷たいものでも……』なんて調子では、とても入れる雰囲気じゃない。


今は浴衣だからまだいいが、作務衣さむえや甚平なんて格好だったら絶対につまみ出されるだろう。



白い暖簾をくぐると、店員さんがこちらを見てすぐに中に案内してくれた。


高級感が漂う店内は、木の温もりと現代的な要素が絶妙に融合しており、堂々として威厳がある。


喫茶店なのに一部屋ずつ分かれている。



どんだけ高い店だよ。

怖い、帰りたい。


……いや、帰るわけにはいかないんだけど。

官房長官が待っているんだ。



深呼吸して、襟を正す。


草履を脱ぎ、案内された部屋に入ると、鈴木官房長官が窓の外をぼんやり見ていた。



掘りごたつになっているこの座卓……ぎっしりと詰まった木の密度、深みのある褐色、そして美しい光沢――花梨だ。


これ、全席にあるのか……?



息を呑んだ。


大工の金次じいさまが「これが使える家は金持ちだ」と言っていたのを思い出す。



ほかにも、織り目のきめが細やかな畳とか、花の文様の欄間らんま、窓の木枠に至るまで、繊細で上品な職人技が見受けられる。まさに高級喫茶店だった。



「お待たせいたしました」



背筋を伸ばしながら、心の中で少しだけ身構える。



「すまないね。私用で呼び出して」



意外なほどやわらかい声だった。

もっと事務的に話す人だと思っていたから、ちょっと驚く。



「いえ、お気遣いなく」



好きなものを頼んでいいと言われたので、そこは遠慮なく上生菓子二個と抹茶の組み合わせを頼む。官房長官は甘酒と抹茶のみつまめを選んでいた。



とうさまの経営する和菓子屋以外の上生菓子を食べるのは初めてかもしれない。


この店は前から気になっていたと言っていたし、休みが合えば実家のみんなを連れて来てあげよう。


まあ、それは後回しにするとして。



今は、この人から何か情報が得られるのか確認しないと。



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