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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第7話 絶対絶命のピンチ


二人の間に割って入るように、結界魔導士の橋下さんが、茶髪の長いお下げ髪を振り乱しながら走ってきた。


事情を聞くよりも先に、懐に資料を突っ込んだ。



「どうした美桜、何があった」


「それが……」



ちらと入口の扉に目を向ける。

二人でそれを追うと、ちょうど扉が開いた。


なぜ……ここに?



ぎょっとしてしまって、呼吸が一瞬止まってしまった。



人事や統計の事務を扱う局の長、鈴木官房長官が手をうしろに組んだ状態で入ってきた。



この人は――神屋大臣の部下だ。



彼は建物内を見渡したと思ったら、俺の姿を捉えた瞬間、目を鋭く細める。



「……なぜ、組合を辞めた者がいるのかね?」



「なぜ?」と聞きたいのはこちらの方である。今までここに来ている姿を見たことなかったぞ。


肉をそぎ落としたような細身の体。身につけたスーツは暑さをものともしないほど隙がなく、折り目すら乱れていない。

まるでその姿ごと、この場を支配しているかのようだった。


目つきは鋭く、何かを見透かしているようだ。その厳しい表情と相まって、威圧感を与える。



この人は……組合を抜けた俺に嫌悪感を抱いていると、もっぱら噂があった。

辞めるのに手こずったのもこの人のせいだと。


関わったこともないのに失礼だな、と思ったことが何度かある。

まあ、変な能力とハーフのせいかもしれんが。



組合内の空気がしんと静まり返る。



「……質問に答えてはくれんのかね、小鳥遊たかなし


「ああ、すみません。今日来られると連絡がなかったものですから。驚いてしまって」



椅子から静かに立ち上がる玲さん。官房長官の目の前に立ち、にこやかに微笑む。


『何しに来たんだ?』みたいなその顔が怖い。組合員全員が震え上がったことだろう。



「立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」



……玲さんが時間稼ぎしている間に何か考えないと。



……俺が火災の件でここにいたって知られたら、かなりまずい。

大臣の耳にでも入ったら、本部ごと吹き飛ぶ。


頭が真っ白になって、呼吸が浅くなる。



何か……手はないか。


うっすらと額に汗が滲み、浴衣が肌に貼りついた。



――官房長官は、仕事を完璧にこなす機械人間と言われていたっけ。

だからって感情がないわけでもあるまいし、好きなこと、気になることがあるはずだ。


たしか……官房長官には、ある噂があった。



本当にそれが事実なら……いや、藁にもすがる思いでいい。これが突破口になれば――逆に、味方についてくれるかもしれない。


緊張しすぎて、顔の筋肉が引きつる。



……いや、違う。


これならいける、そう思った瞬間、口の端が上がったのかもしれない。

見られていないことを願おう。



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