第6話 身辺調査の資料
「自分も調べましたよ」と、大臣に関する資料を机に広げる。
八意高校のような特殊な学校ではなく、一般人が通う大学を卒業し、そのあと政治家になった。
人柄を探そうと思って出てきた情報によると、本人は食道楽らしい。最高級品だろうが珍味だろうが、どんなものでも平らげるとか。
『大臣が行った店はしばらく繁盛する』なんて記事もあった。
……正直、どうでもいい。
こんな話ばかりで、肝心な情報は何ひとつ出てこない。
「紙面上では人のよさそうな大臣なんですけどね」
「ああ、だから正直信じられんよ。……だが、組合に対して調査の打ち切り、春日井校長に対して調査依頼の禁止。何かを隠していますと言っているようなもんじゃないか」
唇の端を吊り上げて、悪い顔をしている。
前に玲さんが「我らが消される前に、大臣を引きずり下ろせばいい」とか言っていたな。
難しい案件になると、楽しそうにするところは陽菜とそっくりだ。
玲さんが細かく調べてくれた、大臣の人生年表を簡単に説明されるが、怪しいところは何もなかった。組合の調査力を持ってしてもこの結果だと、先が思いやられる。
「それと……」と、もう一束資料を出してきた。
「ユウナ一人じゃ忙しそうだったから、ついでに霜月弘清のことも調べておいた」
「本当ですか? ありがとうございます」
霜月弘清。
今年誕生日がきたら二十一歳になる。俺の一つ下だ。
一般高校を卒業したあと、父親の研究を手伝う。
魔力の移植はされておらず、本人も魔力を有していない。
やっぱり、彼は魔術と関係がないな。
そのほか備考とくになし。
ほかにも、行方不明の研究員の資料を渡されたので読んだ。とくに変わった内容のものでもないので簡単に。
それにしても、組合が手伝ってくれると調べ物が早くできてとてもいい。
忘れていたわけじゃないが……やっぱり、普段の仕事と生活をこなしながら、お嬢ちゃんと大臣に見つからずに調べるのは骨が折れる。
正直、もう限界だった。
人手があるって、こんなにありがたいものだったのか。
玲さんは机に広げていた紙をかき集め、整えてから、俺の前に差し出した。
「とりあえず以上だ。ほかに何かわかったか?」
「……そうですね。一応、霜月先生が行った実験内容を調べていたのですが、秘匿事項なのかさっぱり」
わざとらしく肩をすくめた。
焼け落ちた研究所に行ったところで、資料は雨風に晒されている。
読めるとも思えないし、研究員だった飯島に聞いたって、全部覚えているはずもない。
大臣の目的を調べるのも大事だが、呪いを消すために行った実験内容を知りたい。それらの内容以外で魔術を解除する手がかりを探すのだ。
研究所跡地に向かうことには変わりないが、何か証拠があるか……
「玲さん! 利他くん! 資料隠して!」
橋下さんの突然の叫び声に、緊張感が走った。




