第5話 関係者の行方
金炎は心の奥底にある強い感情を核にして発動する、極めて不安定な魔術だ。錯乱状態のまま遠くに移動するなんて、まず無理だろう。
となると、別の誰かがそこに霜月優香を置いていった?
……なんのために?
現場にいた、飯島のような組合出身の研究員の判断で、安全な場所に飛ばされた――とも考えられる。
調査のため、ワタツミ街をそれとなく見て回ったりしてみたことがある。
役場の辺りは道路が綺麗に整備されていて、朝から散歩する人がそれなりにいた。
……もしかして、わざと人目につく場所に放置して、誰かに彼女を保護してもらおうとしたのか?
「夜中なら、誰にも気づかれずに娘を運ぶのは難しくない。……ただ、気になるのは、火災を起こした張本人が外に出されて、同じ場所にいたはずの人たちが行方不明になってるってことだよ」
たしかに。
霜月先生や兄の弘清さん、何人かの研究員は未だに行方がわからない。大臣によってどこかに連れていかれたのだろう。
今ある情報だけだと……そうだな……
「大臣が霜月優香を人質にとって、“精霊を死体に入れる”実験をするよう脅迫。精神的に追い詰められた彼女が、魔術を発動……その後、協力してくれそうな人間だけを拉致して、必要なくなった彼女はお外にぽい、とか?」
「今はまあ、その線が濃厚か。大臣は魔法を使えなかったはずだが……霜月優香を役場に移動させた方法がわからん。あの娘に“何か”を見られたから記憶を消したのだろうが……機械も使わず、魔法も使えないのにどうやったのか……」
二人で腕を組み、首をひねる。
ちらっとこちらを見ないでほしい。『おまえならできるんじゃないか?』って顔に書いてある。
「まあそれは後回しだ」と、次は大臣についての調査資料を出される。
「神屋新、年齢は五十八。二十八歳で魔法大臣に就任し、魔導士協同組合を設立した。今じゃ、知らない人間がいないくらいの大物だ。魔導士が頼れる存在として認められたのは、この人のおかげだろうな」
この人がいなかったら、魔導士たちは力を持て余し、今よりもっと治安が悪くなっていた。
役割を与えられることで、一般人からは『不可思議な力を使う危険な輩』という恐怖の対象から、『その力で人助けしてくれる頼もしい存在』として確立することができた。
俺がこの国に住み始めたときにはもう、組合の存在があったから平和に過ごせたと思う。
その点に関して、大抵の魔導士は感謝していることだろう。




