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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第4話 当時の居所


「おはようございます。昨日は大変だったみたいですね」


「おはよう。ああ、バカの相手は疲れるよ、まったく」



陽菜が「来る日の前日までに必ず連絡しろ」と念押ししてきたので、昨日のうちに今日の訪問を伝えた。


そのとき、電話の向こうでバタバタと騒がしい音がしていた。何事かと尋ねると、間抜けどもが本部を襲撃しに来たのだそうだ。



魔導士の中でも優秀な人間が集まった本部に奇襲を仕掛けるなんて……愚かな連中がいたものだ。



無意識に、建物内に壊れた箇所がないか探してしまった。


明るい色合いの木の床は、昨日の襲撃で多少傷はついているものの、剥がれたところはなかった。陽が差し込むと、まるで蜂蜜を塗ったように、床板がやわらかな金色に輝いた。


広間には無骨な木の机と椅子が整然と並び、どれも使い込まれて角が丸くなっている。


ここは、酒場と言うより食堂に近い雰囲気だ。



壁は白い漆喰とはりがむき出しの木造り。高い天井には石油ランプが吊るされ、灯りがちらちらと揺れている。


ひどく損傷した箇所が見当たらない。

ということは、まともな勝負にもならなかったのだろう。本当に愚かだ。



「ああ、そうだ。火災の件については、みんな事情を知ってるから、気を遣わなくていいぞ」



玲さんはそこらにあった椅子に座り、正面に座るよう促される。


そうして、数日前に俺が送った、ワタツミ街で手に入れた調査結果の写しを机に広げられた。



「火災が起きたあと、行方のわかる研究員と霜月優香はどこに行ったのか、こちらで調べてみた」



二年前の当時、消防士に確認した話では、研究所の建物内および敷地には誰もいなかったと言っていた。


飯島は消防士を呼びに行ったと供述していたから、ほとんどの研究員は、島の外に脱出したのだろうけど……お嬢ちゃんのことはわからないな。



彼は続けて「火の中からは大臣が()()で出てきた」と言っていたから、神屋大臣が彼女を抱えて運んだわけではないと思われる。



研究所に置き去りにされたということでもない。


……なぜ今まで、お嬢ちゃんの行方を深く考えなかったんだろう?

てっきり、彼女は消防士に助け出されたのだと思い込んでいた。


頭から抜け落ちていたことに、自分が一番驚いている。



ふと顔を上げると、玲さんが静かにこちらを見ていた。その視線に、考えが一気に現実へと引き戻される。



「研究員十人は警察署に逃げ、その内の一人はワタツミ支部に。霜月優香はワタツミ街の役場の外に倒れていたそうだ」


「役場……? 研究所からはかなり離れていますが」



……おかしい。


胸の奥でざらつくような違和感が広がる。



役場に行くには、研究所から船に乗り、港から走って十五分ほど山の方角に向かう必要がある。


魔術を発動し、研究所が燃える中、そこまでして彼女が役場に行ったとは思えない。


何かが……妙に引っかかる。



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