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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
6章 判明

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第1話 梅雨入りの人質事件


依頼人の焦りが伝染したのか、電話が耳に痛いほどの高音で鳴った。

男性はやかましく鳴るそれを急いでとり、受話器の向こうにいる人間の言葉を待つ。



『……金は用意できたか?』


「ああ! もちろんだ! 妻は無事だろうな!?」



彼が手に持っていた受話器に触れ、魔法で声の主の居場所を探る。

電話線を伝う音の波から、声の発信地をたどるのだ。


……この家からはだいぶ遠い、住宅地にある一軒家だ。



電話機の横に置いてあった用紙に『見つけた』と書いて家を出た。



背負っていた差し袋から傘を取り、それに腰掛ける。

風をまとわせ、石突きを先頭に空へと飛んだ。




***




妻を人質に身代金の要求だなんて、なんとも物騒な事件だ。


着いた先は、これといって特徴のないごく普通の家だった。


豪邸を狙った……とかではなく無差別か?


いや、でも、電話が置いてある時点で金持ちか。自宅に自作の電話機があるせいで、ついそのことを忘れてしまう。



今回の犯人のことを調べたら、余罪もあるかもしれない。

まあそれは警察に任せておこう。



ただの来訪者ですと言わんばかりに堂々と叩き鐘を鳴らす。返事がないのでさらに数回鳴らしてみた。



どしどしと、重い足音を立てて男が一人、不機嫌そうな表情で出てきた。体格がよく、腕っぷしの強そうな強面の男だ。


殴られたら、数分は立てそうにない――いや、最悪、意識を飛ばされるかもしれない。



平常心を意識し、笑顔を浮かべてみせた。



茶近さこんさんのお宅ですよね?」



表札に書いてあった名前を呼ぶ。



「……そうですが、何か?」


「借り物を返しにきたのですが」



片眉を上げ、借り物を要求してきたので手に持っていた朱色の傘を渡したら、勢いよく扉を閉められた。ご丁寧に鍵までかけてくれる。


廊下を歩く音が離れていったところで、最近開発した音消しの結界を張り、玄関の引き戸に魔法を使った。

魔法が鍵穴の形を読み、強制的に解錠して家の中に入ることができた。


事情を知らない第三者からしたら、完全に泥棒だ。

誰も見ていないことを祈ろう……。



渡した傘は玄関先に捨てられており、悲しい気持ちで舌打ちしてからそれを回収しておく。



静かに廊下を進む。


男が入室した居間に続く扉の前に立ち、耳をすませた。



「なんだ? 勧誘か?」


「届けもんだってよ。変なときに来やがって」



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