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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第54話 謎の白猫


「昨日聞きそびれたけど、何に対して常時魔力を使ってるんだ?」



「どういう意味だ?」と聞きかけて、那智の意図に気づいた。

言いかけた言葉が、喉の奥に引っ込む。



意識が一瞬だけ、深い水の底に引きずり込まれた気がした。


言葉に詰まった俺を無視して、彼は続きを話し始める。



「昨日回復させているとき、少量ずつだが魔力が減っていってたんだよ。気絶している人間が魔法使えるわけないし、どう考えてもおかしい」



緊張のあまり、唾を飲み込む。



「で、思い当たるとしたら……あの猫に、どんな状態になっても魔力を注ぎ続けるようにしていたんだろ?」


「……よく気づいたね」



普通、魔法獣は、術者が眠ったり気絶したら消えてしまう。だから疑問に思ったのだろう。



属性魔導士は、自分が出した魔法に対して、半永久的に召喚するようなことはできない。


無属性区分の結界魔導士、橋下さんは睡眠中でも結界を張り続けられるように訓練しているため、それはできる。


つまり、何かを召喚し続ける能力は、無属性魔導士特有のものと言える。



ちなみに俺が物体を作った場合、魔力を流さなくても、一生維持し続けることができる。


……ソラやほかの魔法獣、ついでに人間は“活動をする物体”ではあるが、さすがに魔力を流さないと維持はできない。



ソラを一日中どころか、年中保ち続けているということは、魔力を常に使い続けていることになる。


どんな状況でも魔力が減っていくから、規模の大きい魔法を使うとすぐに欠乏症になりかける。

気づいたら目が霞んでいたり、意識が飛びかけたこともあった。



しかも回復した分の魔力は全部ソラに流れていくため、今まで全快になったことがない。組合に入る頃からずっと。



「……ったく、魔法獣にしては出来のいい猫だと思ってたけど」



那智はため息をついて、呆れたように目を伏せた。



「危うく死ぬところだってのに。……何やってんだ、このバカ」


「次からは気をつけるよ」



光癒みつゆの魔導士”に魔力の流れでは嘘つけないな。

まさかそこから気づかれるなんて。



「自分のこと疎かにしすぎ。みんな、ユウナのこと気にかけてるんだから、もうちょっと大事にしろよ」



胸の奥を貫かれたような感覚に襲われる。他人様から見たら、そんなに危なっかしいことをしていたんだな。


「みんな気にかけてるんだから」という言葉が、妙に重くのしかかる。


どうして周りの人たちの気持ちに気づかなかったんだろう。これは、反省点だ。

自分の行動を見直すいいきっかけかもしれない。



「……で、今まで何回欠乏症になった?」



……十八の頃に一回、


ルネの召喚で一回、


昨日の『原点回帰』の魔法で一回、


飯島との戦闘……数えていくと、指が四本立っていた。



「計四回、かな」



それを言ったら頭を叩かれた。





散々説教をいただいたあと、なんとなくげんなりした気持ちで部屋を出た。


――甘いものが食べたい。無性に。



なんだか、頭の中がぐちゃぐちゃで整理が追いつかない。


とりあえず、町をぶらぶら散歩して、見慣れないお菓子を選ぼう。



組合の入口で置き去りにしてしまった、ソラとお嬢ちゃんという心の癒しの姿を探した。



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