第50話 今後の課題
お嬢ちゃんが魔力の移植後、魔術を一度も発動しなければ……縮小化の薬を投与されることで、魔術を使用できるほどの魔力量はなくなる。
そうなれば、受け継いだ呪いを受けることなく、一生、魔術なんて使わずに済んだはずなのに。
くそ。なんであんな火事が……。
あれさえなければ――お嬢ちゃんは、ただの普通の女の子として、笑って過ごせていた。
握った拳に力が入る。
「魔術を取り除く有効的手段は、ほかに……何かありませんでしたか?」
頼りなく震える声が、自分のものとは思えないほどか細かった。
「所長は結婚してからずっと、多方面でそれの研究をしていた。一番効果があったのは魔力の移植だが、発動されてしまったらもうどうしようもない」
――どうしよう、どうしよう。
息が浅くなり、喉の奥がひゅっとすぼむ。
霜月先生ですら二十年かけて見つけられなかったんだ。
俺が、今さらそんな手段を――見つけられるのか?
動揺し、思わず爪を噛んだ。
「おい、落ち着け。とにかく、魔術に関する資料はすべて、八意高校の理事長の家にある。所長も借りて読んでいたが、魔導士であるあんたが読んだら、また違った見方ができるかもしれん」
――鳳さんか。関わったことがないから詳しくはわからない。
相手も俺のことなんて知らないだろうから、その知識を渡してくれる保証はない。
あの人に、俺が魔術のことを知っているとバレてしまっても大丈夫だろうか?
神屋大臣の耳に入ってしまえば、この調査を打ち切られ、お嬢ちゃんの中にある魔術を取り除く術を調べることができなくなってしまう。
だが、彼女がいくつまで生きられるのかわからない以上、急がなければならない。
「――わかりました。では、最後にもう一つだけ。魔法や魔術の痕跡は、二年経っても研究所に残留していると思いますか?」
「それは無理だろう。だけど発動した証拠くらいはあるはず」
……やるべきことは三つある。
まず一つ目、霜月弘清について調べる。
お嬢ちゃんの記憶を取り戻すためには、彼の情報が必要だ。
二つ目、鳳健之助の家に行き、魔術の解除方法を探す。
ここが一番の問題だが、最も重要な手がかりになるはず。
三つ目、研究所に行く。
火災の証拠は残っていないかもしれないが、魔術が使われた痕跡は見つけられるかもしれない。
本当は、霜月優香が何をきっかけに金色の炎を発動したのか知りたかったが、現場を見ていないなら仕方ない。
けど、かなり有益な情報をもらえたんだ。飯島には感謝してもしきれない。
……ようやく、手がかりを掴めた。
絶対に、お嬢ちゃんを救ってみせる。




