第44話 巨大生物の真実
「それでは、話を進めましょうか。質問というよりは、俺の推理になりますが」
ひと呼吸置いて、じっと飯島の目を見据える。
「……あなた、昨日の取り調べで嘘をつきましたね?」
目の前の男は、予想だにしていなかった問いかけに目を丸くする。
先ほど丸眼鏡を出したとき、霜月先生が分解と解析を行ったと言っていた。
昨日の時点でいろいろ思考を巡らせてはいたが……その言葉で確信した。
「丸眼鏡をかけた状態の人間に、嘘をつく方法を知っていますね?」
どうやったかはわからないけど、先生が嘘発見器の弱点を見つけ、誤魔化す方法を見つけたのだろう。
「あー……はは……」
戦闘の場で、お嬢ちゃんに本当の理由を語れないほどなら、きっと供述も偽るはず――そう踏んでいた。
実際それは当たっていた。
きっと……組合に対し、薬を使った本当のわけを知られたくなかったのだと思われる。
おそらくそれが、俺の一番知りたい内容と関係している。
昨日の聴取で飯島は、今回の事件について「邪魔者扱いされてむしゃくしゃしてやった」と言っていた。
まったく、ふざけているな。
誤魔化すためとはいえ、よくもそんな理由を思いついたもんだ。
「昨日の取り調べでは、『邪魔者扱いされてむしゃくしゃしてやった』と言っていたそうですね。でも、あなたと会話してみて、それは違うのではないかと思いました」
「……え?」
「本当は、動物に薬を投与したものの、制御が効かずに暴走した……ではないですか?」
飯島は苦々しげに視線を逸らした。
――もしこれが事実なら、目の前のこの男が逃げようとした理由も、嘘発見器に嘘をついた動機もすべてつながる。
「あなたが動物に薬を使った本当の理由は――《《霜月優香の魔力を縮小させる薬を作るため》》。研究途中だった肥大化の薬を使ったらどうなるのかを、動物で実験していたのではないでしょうか?」
言葉に詰まっていた。冷や汗をかき、唾を飲み込んでいる。
お嬢ちゃんのことを娘のように慕っていたはずの人が、昨日、彼女を攻撃してまで逃げようとした。その理由が、ただの抵抗とは思えない。
――絶対に何かある。
おそらくそれは、魔術に関わることだ。
「魔力の枯渇は死を招きます。ならば、魔力を縮小させることで、魔術を発動するだけの魔力がなくなるのではないかと考えた霜月先生は、縮小化の薬を開発しようとした。でも、思ったようにはいかなかった」
机の上で指を軽く叩く。
焦りを見せるつもりはなかった。が、真実を知りたいと、自分が思っている以上に気が急いているのかもしれない。
音を聞いた瞬間、相手の喉が小さく鳴ったのを、俺は聞き逃さなかった。
「なので、先に肥大化の薬から着手し、それを参考に薬を作ろうとした――違いますか?」




