表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

143/194

第37話 静寂のぬくもり


部屋に入るとすでに敷布団が並べてあった。

さらに妖精二人とソラ用に大きめの枕が用意されていた。


仲居さん、気を利かせてくれたのか。ありがたい。



「おかえりー。逢引楽しかった?」


「逢引じゃないから」


「本当かしらねえ?」



妖精たちのにやにやした顔に、なんとなく気恥ずかしさが込み上げる。



俺のいない間に、妖精と猫ちゃんはずいぶんと楽しそうなことをやっていたようだ。

ソラの首には、色とりどりの花の首輪がつけられていた。白い毛並みに映えて、まるで小さな花壇みたいだ。



「お、いいじゃん。かわいい」



声に出してしまったほど、つい見惚れてしまった。が、首輪を普段しないせいか違和感が拭えないようで、後ろ足で花輪をとろうと蹴っている。

妖精の魔法で作られた花弁が、はらはらと畳の上に落ちて消えてしまった。


ソラたちのいる場所の近くにある掛け時計を見ると、出かけてから二時間ほど経過していて驚いた。


そんなにゆっくり散歩しているつもりはなかったんだけど。



「そろそろ露天風呂入ってこようかな」


「あ、わたしもあとで入ります」



「じゃんけんする?」


「いえ。お先どうぞ」



部屋の真ん中にある襖を閉め、露天風呂に面した部屋を、着替える場所にした。

部屋に備えつけられている寝巻きを用意し、身につけていた浴衣は畳んで風呂敷にしまう。


素っ裸の状態で風呂に通じる窓を開けようとした瞬間――



「っ!?」



背後の襖が急に開いて、思わず声が出そうになった。ソラだった。



「やめてくれ。寿命縮むかと思ったわ」



胸を押さえながら、情けなくため息が出た。


俺が隠すのは違う場所だというのに。



「ぼくも入ろうかなーって」



頭が一瞬真っ白になって、言葉が出なかった。



「……嘘だろ?」



実際、ソラが浴槽に入ることはなかった。

低い柵の上に座り、悠々と身を伸ばしている。


露天風呂は、四角い木の浴槽になっていた。

湯に身を沈めると、日中の疲れがふっと抜けていく。

肩まで浸かると、まるで酒のますの中にいるみたいで、なんだか不思議な気分になる。


大浴場とはまた違った源泉を使用しているらしく、肌触りは普通のお湯のようだが、顔に跳ねたお湯をぬぐって、なんとなく舐めてみたら、少ししょっぱい味がした。


……これ、塩泉?



風呂に浸かりながら景色を見る。今日は澄んだ夜空だった。

旅館の灯りを消したら、星の光だけで辺りが見渡せそうなくらい、無数の星が瞬いている。空に手を伸ばせば、星が指先に触れそうなほど近かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ