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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第34話 紫陽花の盛装


「お嬢ちゃん、このあと付き合ってよ」



外に出ようと誘うと、うれしそうに頷いた。


どうせなら少し華やかに着飾ってあげようかな。


座椅子に無理矢理座らせ、栗色の髪と同じ色の紐を三つと、紫陽花の飾りがついたものを二つ、魔法で作り出す。


髪を上下に分けて編み込み、それぞれの束をくるりと巻きつける。

毛先に紫陽花の飾りがくるように結べば完成だ。


完璧じゃない?



畠山家を家出したときは髪質がパサパサしていたが、久しぶりにじっくり見るとサラサラになっている。


心の中で勝利宣言した。

誰に向かってとか、そんなの気にしない。



「こんな結び方初めて見ました……!」



髪型に感動しているお嬢ちゃんの反応を見て、思わずにやけてしまった。そんな自分が鏡の端に映っていたのが引くほど気持ち悪くて、顔を逸らした。



「前実家帰ったときに、ねえさまが教えてくれたんだ。若い子はこういう遊びのある髪型が好きだって」



昔は、ねえさまに生えている髪のすべてを三つ編みにできるかどうか、とか実験してたなあ。

今は短いからできないだろうけど。



「そうだ。その帯とってくれる?」


「え、帯ですか?」



簡易浴衣は、腰紐で結ぶ作務衣さむえみたいな作りだ。帯を外してもはだけない。


ビットが持ってきてくれた荷物から白色の半幅帯を出す。普通のものより幅の細い帯だから、半幅帯という。

それを巻いて花の形に結び、紫陽花の飾りを見える位置につけてできあがり。


せっかくなら自分も見たいだろうと思って、部屋の隅の姿見を引っ張ってきた。



「わあ、すてきです! ありがとうございます!」



大きな瞳を輝かせ、やわらかい笑顔を向けてくる。頬を染めて、鏡の前で何度もくるりと回っていた。



「どう? 苦しくない?」


「全然平気です」



ほっと胸を撫で下ろし、釣られて自分も笑ってしまった。

簡単な装いでも充分だけど、やはり滅多に来られない場所なのだから、おしゃれに着飾りたいかなと思ってやってみた。


ご満悦みたいでよかった。



着付けが終わった瞬間に、お嬢ちゃんの周りをぐるぐる回っていたソラが「あっ」と、声を上げた。



「ユウナ、手提げ鞄忘れてるよ」


「うわ、本当だ。忘れてた」



何か買うかもしれないのに、手に持たせるわけにはいかない。


竹かごか……巾着か……ええい。両方混ぜちまえ。


魔法で召喚したのは、飴色の竹かごに、白い巾着が入った無難な手提げ鞄だ。


彩りとか、もっと工夫できたかもしれない。まあいいか。本人が気に入ってくれればそれで充分だ。



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