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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第27話 破岩の魔導士


「傷、ちょっと見せてくれる?」



彼女が怪我した部分を確認し、跡が残っていないことに胸を撫で下ろす。


とんだくそやろうとはいえ、那智の光魔法の回復技術はすばらしい。

最高の慈悲深さをもって、海に沈めるのは見送ることにしよう。



お嬢ちゃんの服は、魔法でひとまず修復しておいた。



「じゃあ、俺はソラを迎えに行ってくる」



状況が落ち着いたら、またちゃんと話をしよう。飯島のことは、気になるだろうから。



部屋に入ると、寝台の上でソラが悠然と前足を舐めていた。その正面には、洋装に身を包んだ坊主頭の大柄な男性がどっしりと座っていて、俺に気づいて立ち上がった。



「ユウナ、お客さんー」


「おお、利他さん。具合の方はいかがですか」



どちら様だろう……?

片目には白い眼帯。診察帰りの人か?



「ええ。問題ありませんよ」



心配していた旨を話され、そのあと自己紹介された。


オオツチ支部責任者、熊山さん。


優しげな笑顔に、どこか福々しい体つき。なんとなく大黒天を連想してしまった。

全体的に親しみやすい印象の三十代くらいの男性だ。


スーツの上に魔導士組合の腕章を付けていなかったから、組合員だと気づけなかった。

仕事があらかた片付いたから来てくれたのかもしれない。



小鳥遊たかなしさんから、利他さんが目を覚まされたとお聞きしまして。ご挨拶に伺いました」


「そんな、わざわざありがとうございます」



「病人は座ってください」と言われ、ちょっと照れくささを感じながら寝台に腰掛けた。


そうだよな……俺、病人だわ。

那智に壺かぶせられるくらいには元気だけど。



膝の上にするりと侵入してくるソラの首を掻いてやった。


熊山さんが正面の椅子に腰掛けると、椅子が苦しそうに軋んだ音を鳴らす。



「この度は、ご協力いただき感謝申し上げます。おかげさまで、被害が出ることもなく、こうして日常を取り戻すことができました」



頭のてっぺんが見えるくらい深く頭を下げる熊山さん。


こういうの慣れないから、どう返すのが正解なのかわからない。胸がむずむずする。



「とんでもないです。お役に立てて光栄です」



言いながら、自分の声が上ずっているのがわかった。

こういう改まった言葉って、口にするとやけに気持ち悪い。おまけに、変に丁寧に喋ろうとすると語尾がふにゃふにゃになる。


本当苦手なんだよな……。


とにかく、下手なことを言わなくてよかった、と一安心する。



社会人同士のやり取りが難しくて未だに苦手だ。

接客業の人とか本当に尊敬する。

熊山さんも、その道の達人なんだろうな……。



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