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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第26話 過保護の護衛


「お嬢ちゃん、どこにいるか知ってる?」


「隣の部屋。那智もいるよ」



那智もいるなら、ついでに治療のお礼でも言っておくか。


「一緒に行く?」と尋ねたが、ソラはタオルの上が気に入ったようで、そのまま箪笥の中で丸くなっていた。どうやら動く気はないらしい。



「じゃあ行ってくる」



ソラが踏んだタオルは、あとで洗濯してもらおう。



病院の通路に出た。


通路には、患者や病院関係者が行き交っており、それぞれの目的の場所へと足を運んでいる。多少慌ただしく動いているように見えるけど、日常に戻りつつあった。



右隣の部屋の前には知らない人の名前が表示されていた。

左の部屋は誰の名前も出ていない。たぶんこの部屋だ。


扉を叩こうとしたとき、中からなにやら楽しげな声がして、思わず手を止めた。


うーん、邪魔するのもな……。



声に引き寄せられるように、耳が自然と扉へ近づいた――



「いやー、やっぱりその服似合ってるね」



那智の声だ。



「ありがとうございます。でも、もう破れちゃいましたね……」



陽菜の声がしない。お嬢ちゃんと二人だけってことか。



「大丈夫。また新しいの買えばいいし。それより、優香ちゃんってなんでも似合うよね。肌もすごく綺麗だし――」


「ふあ!? ちょっと、もー……くすぐったいですよ」



……ん?

何してる?


まさか、いやいや、そんなはず……いや、でも……。



触ってるだろこれ!!!



感情と共に腕が先に動いた。

扉は騒音を立てて開かれ、それに驚いた二人の時が止まったようだった。


……那智があろうことか、靴下の留め具に指を滑り込ませ、彼女の太ももに触れているではないか。



……血の気が引いた。

いや、逆に頭に昇ったのかもしれない。



「あ、俺死んだ」


「てめえ!! 十二も下の子に何してんだ! その指今すぐ切り落としてやる!」



怒鳴った声が反響する病室に、自分の鼓動だけがやけに大きく響いていた。




***




「もう動いて大丈夫なんですか? あと……那智さんは」


「あれは放っておきなさい」



不埒な男は、部屋の隅にあったオオツチ町の陶芸品――種壺を頭からかぶせ、部屋の外に投げ捨てた。


なあにが、ゆっくりお互いのことを知っていこう、だ。下心丸出しの変態め。



「お嬢ちゃん。いくら知人とはいえ、もう少し危機感を持ってくれ」


「ふふっ、わかりました。でも、那智さんに悪気がなかったのは、伝わってきましたから」



友だち感覚で触られたのかと思ったのか?

まったく、危機感がなさすぎる……。


よく見ると、彼女の頬はほんの少し赤く、俺から目を逸らすような仕草を見せた。


……やっぱり気づいていたんじゃないか。


呆れて疲れがどっときた。




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