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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第21話 規格外の二人


「――がんばったね」



お嬢ちゃんは震える手で顔を覆い、すすり泣いていた。



「ごめんなさい、ごめんなさい……」



か細く繰り返される声が、耳に痛い。

俺は壊れていない長椅子に彼女を横たえ、血で汚れた手をそっと握った。



「謝るのは……俺の方だ。こんな目に遭わせて、ごめん」



知り合いと戦わせるなんて。

しかもあんな強力な攻撃を、まともに受けさせることになるなんて。


けど――情けない自分と同じくらい、この子を傷つけてまで逃げようとする飯島も、到底許せない。



怒りをぶつけようと振り返ると、飯島は怯えていた。体を震わせ、立ちすくみ、ぶつぶつと「こんな……」「なんてことを……」と呟いている。


まさか……この子に、やりすぎたと思ってるのか?



敵意が一瞬、揺らぐ。

舌打ちひとつし、俺は一歩踏み出した。



「あなた、ここまでしなくてはいけないのですか」



答えは返ってこない。

代わりに、彼は肩を震わせながら、鋭く睨み返してきた。



「この件は……絶対に成功させないといけねえんだよ!!」



その顔に浮かんだのは、罪悪感とも後悔ともつかぬ、歪んだ表情だった。


――けれど、瞬きの間には、もう覚悟を決めた目に変わっていた。



飯島が腕を乱暴に横に振った。



ドンッ!という破裂音。



壁や床が爆ぜるように裂け、新たな木の根が突き出てきた。


速度が異常だ。さっきより遥かに速く、重い!



「しぶとい……!」



魔力を手のひらに集中させ、指を鳴らす。

空間がわずかに歪み、そこに何本もの槍が現れた。


黒光りする漆黒の槍――まるで空間そのものを裂いたかのように、なめらかで鋭利な切っ先。


俺は指揮者のように指を動かし、槍を操る。


根を狙い撃ち、穂先で真っ二つに切り裂いていく。

けど……切ったはずの根が、怯むことなく迫ってくる。


割られても動きを止めない……!?



「……くそ、どこまでもしつこいな!」



槍を多重召喚し、天井一面に展開する。


まるで黒い森。

暗く、冷たく、殺意だけでできた天蓋てんがいだ。



「はあ!? さっきあんな魔法使っておいて……あんた、ばけもんかよ!」


「ひどいこと言いますね」



俺はそのうちの一本を右手に構え、左手で空中の槍を指差す。

すると半数の槍が一斉に飛び、迫る根を打ち砕いていく。残りは一直線に、飯島を狙って突進させる。


だが……やはり。


飯島は木の根で防御し、全てを弾いた。


こいつ……魔力の扱いに、無駄がない。戦い慣れてやがる。



撃ち落とされた槍は壁や天井に刺さり、そのまま動かない。

けれど、飯島はまるで自然そのものを操るかのように、次々と根を繰り出す。


……本当に、俺と同じ人間か?



「……ちっ。化け物め」



腕を横に振ると、停止していた槍たちが、ふたたび動き出す。

壁から引き抜かれ、空中を走るように再び飛び交う。


そして、根と槍の攻防戦が再び、広間いっぱいに広がった。



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