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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第16話 真偽不明の研究員


あと、気になることといえば……陽菜の氷魔法を受けつけなくなる理由に心当たりがない。

水属性魔導士の中で唯一、絶対零度に近い氷を生み出せる彼女の魔法を、鹿がその身一つで無効化できるはずがない。


動物に魔法妨害の結界が張っていないのは、結界魔導士の橋下さんが解除できなかったことから明らかになっている。


……霜月先生、また厄介なものを作ってくれたな。



お嬢ちゃんは実験していないから、攻撃無効化の理由を質問してもわからないだろう。



前方を走っていた男が、一階の広間で急に足を止めた。



白を基調とした広間は、静寂そのものだった。

人の気配はなく、ただ冷えた空気だけが漂っている。壁際には、金属の脚をもつ長椅子がいくつか並び、整然と置かれていた。


行き止まり、というわけではなさそうだ。


くそっ……。

急に走ったせいでこめかみがズキズキと脈打つ。


視界が揺れ、頭が割れそうに痛い。

足も、鉛みたいに重い。まるで、思考までもが沈んでいくみたいだった。



それでも、立ち止まったら終わりだ。

――助けが来るまでは。


自分を落ち着けるようにゆっくり息を吐く。



正面に立ってようやく彼の顔を拝むことができた。


目の下は痩けてクマができており、ずいぶん疲れている印象だ。ひげは手入れされておらず、肌は薄暗い色をしている。

帽子から見える髪の毛は黒くうねり、毛先は跳ねていた。

黒いシャツと紺のズボンが濡れていることから、先ほどまで外にいたのだと伺える。


年齢は四十ほどか。


痩けた頬と陰鬱な眼差し。その顔からは、何かに取り憑かれたような狂気が滲んでいた。



あれ、この顔……たしか。

さっき聞き覚えがある名前だと思ったら、火災に関与していたとされる四人のうちの一人……そう、“飯島”って名前が卒業名簿にあったな。


お嬢ちゃんから研究員だと聞かされたのに……身のこなしがまるで、戦闘訓練を積んだ組合員みたいなせいで、役職を疑わしく思ってしまう。



お互いに距離を置いてじっと待っていると、飯島が帽子のつばを軽く上げ、目を細くした。



「あんた、あれほどの力使ってよく動けるね」


「賛辞として受け取っておきます」



近くで見ていたのか?


ああ、そうか。

鹿に肥大化の薬を投与して、状態を確認していた、というところか。



……正直なところ、欠乏症にならない程度にしか回復してもらっていないから、戦闘になればまずい。


それに、俺の能力は展開が遅くて戦闘向きではない。ソラが誰か連れてくるまで、どうにか会話で時間を稼がないと。



「なぜ、町を襲わせるようなことを?」


「べつに。深い理由なんてないね」



初対面の相手にぺらぺら喋る人間でもないか。相手が答えやすそうな質問でもしてみよう。



「あの肥大化の薬はあなたが製作担当だったのですか? 使い方はどうあれ、効果はすばらしいですね」


「いや、俺じゃない。けど、魔法獣を使った実験は覗かせてもらったよ。投与してしばらくすると体が一回りはでかくなってたな。魔力の塊である魔法獣の体が肥大化したってことは、あの薬は成功したってわけだ。まだ一匹にしか試せてなかったみたいだが」



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