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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第14話 犯人の誤算


目を開ける。


病院の部屋の壁と大きな窓が見えた。

先ほどよりも雨がひどくなり、暗くて何時かわからない。


体の向きを変えると、椅子に座っていたお嬢ちゃんが驚いてびくっと体を震わせた。



「え、もう起きるんですか? まだ三十分も経っていませんよ……」


「結構すっきりしたから、起きるよ。魔法、ありがとうね」



昼寝をしたあとよりもずっと頭がすっきりしている。


火属性にそんな快眠を促す魔法なんてあったか?


彼女に何をしたのか尋ねてみる。



「脳を冷やすとよく眠れるって聞いて……魔法で深部体温を下げて強制的に入眠してもらいました。わたしは火属性使いですけど、攻撃魔法よりもこういうのが得意なんです」



なるほど。

脳に籠った熱を放散させたわけか。


彼女の豊富な知識に再度感謝を述べて体を起こした。



魔力はまだ回復しきっていないはずなのに、体が軽く感じる。


すごい……。



伸びをしている俺の様子をじーっと見てくる彼女は、一体なにを考えているんだろう。



「前から思ってましたけど……利他さんって、まつ毛長いですね」


「……えっ。そうかな……」



お嬢ちゃんの方が長いよね?


彼女の膝の上に座っていたソラが、まるで自分が褒められたかのように誇らしげに鼻を鳴らした。



「そうそう。見つめた相手を悩殺できちゃうんだよ」



そんなわけない。



「やっぱり。寝顔も綺麗だから、つい見とれちゃって……ドキドキしちゃった」



……何を言っているんだこの子は。

こっちがドキドキしちゃったわ。



「寝てるユウナに、ちゅーしようとした女の子から守ってあげた話、聞きたい?」


「えっ。ちょっと聞きたい……」


「……ねえ、その話、俺のいないときにやってくれない?」



――コン、コン。



「……?」



扉を数回叩く音がした。


病院関係者は避難しているはずだから、那智か?

でも、寝てから三十分しか経っていないって言ってたよな。もう来たのか?



お嬢ちゃんが取っ手に手をかける。



その刹那――ぞわりと、背筋に冷たい感覚が走った。

空気が張り詰め、何か見えないものが、扉の向こうからじっとこちらを覗いているような――



「――っ! 結界!!」



何かが弾け飛ぶ。

お嬢ちゃんと廊下に立つ人間の間に結界が張られ、攻撃を防いでくれたようだ。


結界魔導士じゃないけど、結界張れてよかった。



寝台から降り、彼女の隣に並ぶ。


お嬢ちゃんはいきなり攻撃されて動揺したのか、驚いたように一歩引き、唇がわずかに震えていた。


大きな目がさらに見開かれ、声にならない言葉が喉元で止まっている。



「飯島さん……?」



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