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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第13話 弟のお世話


那智の気配が離れたので、寝台に倒れ込んだ。床には投げ捨てられたカッパが落ちている。


回復してもらったおかげで頭痛は治まったけど、まだふらふらする。

こんな状態で行く方が迷惑だ。大人しく横になろう。



しみの少ない天井を眺めるのもいいが、この状態は退屈だった。

仕方ない。のんびりしたかったけど……那智から聞いた話でも思い返すとしよう。



魔力が全身に張り巡らされているというのなら――注射器みたいなものでもあれば、簡単に抜き取れるんじゃないか?

血液みたいに。


科学なんてさっぱりだが、霜月先生なら魔力を抜く道具くらい、ささっと作れそうだ。



もし……それが悪用されたら、いつでもどこでも魔力を抜かれるってことか。

その資料、あのときの火事でちゃんと焼けててくれよ。



病室は静かで、人の気配もない。

誰もいないのをいいことに、寝台の上を転がって寛いでいた。


――布団がやわらかい。

家のやつもこれと同じものに変えようかな、と設備のよさに感動していると、扉が数回軽く叩かれた。


聞き覚えのある声がする……ソラとお嬢ちゃんか。


静かに開けられた引き戸の奥から、白猫が飛び出てきた。



「大丈夫? ユウナ」


「那智があらかた回復してくれたから、なんとか」


「でも、顔色が悪いです。見張っているので、おやすみになってください」



誰が来るって言うんだ、お嬢ちゃん。


投げ捨てたカッパを、備え付けの衣紋掛けに掛けてくれた。


しかし、彼女たちが着ているずぶ濡れのカッパを掛けるところがない。

そこから滴る水が床に広がっていた。


震える様子は見せていないが、きっと寒いだろう。



「乾燥」



二人が着ているカッパの水分が、じゅわっと音を立てて蒸発した。


あ、もうだめだ、疲れた。



「ちょっと、利他さん! 魔法使わないでください」


「……怒った顔もかわいいね」



……って、何言ってんだ。熱でもあるのか。


つい口をついて出た言葉に、自分で驚いた。

誤魔化すように笑うと、布団を引っ張られて頭の先までかぶせられた。



カッパを器用に脱いだソラは、鼻でぐいぐいと布団に隙間を作って中に侵入してくる。


外気に当てられていつもよりひんやりした体毛だ。

きみは中から俺を見張る気か。



「ねーんねーんーころーりーよー」


「わかった、寝る。寝させていただきます」



布団の中に入ってまで歌う子守唄はやめてもらい、そのまま布団に潜って目を閉じた。

……が、眠れない。誰かがいると余計に無理だ。


そんな俺を見かねてか、お嬢ちゃんが顔を覗いてきた。



「……もしよかったら、眠りやすくする魔法、使いましょうか?」


「……そんな魔法、あったっけ?」



両手の指先でこめかみに触れてきた。


彼女の指は、冷たくて細い。

その感触に、胸の奥が妙にざわつく。



「はい、目を閉じてください」



こめかみに感じる魔法の気配が、波のようにゆっくりと広がっていく。

まぶたが重たくなり、意識がふっと遠ざかる。


そして、あっさり眠りについたのだった――。



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