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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第12話 魔力の仕組み


「それより……悪い。もう少しだったのに」



あと少しだけ魔力が残っていれば、あの鹿たちがどこから来たのか突き止められたはずだった。俺のせいで、貴重な証拠を取りこぼしてしまった。



「あんだけやってくれたら上出来だっての。まったく……そのくせ、直せって言ったろうが」



今度は額を指で弾かれた。


ああ、そういえば組合員だったときも、こんな感じで叱られたっけ。



「じゃあな。お大事に」


「あ、ちょっと待って」



光属性の那智なら知っているかもしれない。魔力の仕組みを。


研究所火災の調査中に抱いた疑問をぶつけた。



「光魔導士って、身体のどこにある魔力を回復させているんだ?」


「ああ。どこってわけじゃなくて、魔力は血管みたいに体中に張り巡らされてるから、全身に対して魔法かけてる。例えば――」



普段、手を動かすときは……ざっくり言えば、脳からの”動け“という指令で、手の神経に信号が届いて動く仕組みだ。



「魔法もそれと同じ。手の周辺にある魔力に脳から指令が出て、手から魔法出てくるってこと。だからいくら使っても、手の部分だけ魔力がなくなるってことがない」



へえ、意外と簡単な仕組みだ。


減った魔力が回復する理由は、心臓部にある大元の魔力の塊が使った分の不足を感知し、魔力の生成を増加させて補完するから。


光属性魔導士がする回復魔法は、この働きを体外から手助けすることで、魔力の増加を促す作用があるらしい。


なるほど……勉強になるな。



「逆に、体外に魔力を抜くとどうなる?」


「俺も最近知ったんだけど……魔力を外に取り出すと、大元の魔力が異常をきたして回復量の判断ができなくなるらしい。身体の内側にある魔力の不足は徐々に補っていくけど、急に外から抜かれると、何事?って慌てて回復させようとするんだって。で、急激な魔力の分泌によって人間の身体が持たなくなって、最終的に死ぬ」



うわ、まじか……。



「ひどい症例だと、魔力が暴走して魔法乱射したあと、枯渇するんだってよ」


「血液みたいに、抜かれた分だけ勝手に補ってくれるのかと思っていたのに」



魔力って、人体よりよっぽど雑なつくりしてんのか。


……これが、魔力の移植で魔力提供者が命を落とす理由か。

それと――霜月香代さんが魔力を移植したあと、爆発事故が起きた件も。


医者やめたのに、勤勉で本当に助かる。



「……にしても、倒れる前に症状とかなかったのか? 頭痛、息切れ、悪寒とか」


「いや……急に、ふらっと。倒れてから痛みがきた感じ」



自分の身体なのに、どうにも掴みきれない。

魔法を過剰使用した場合、普通は徐々に具合が悪くなるはずで、欠乏症になる前に魔法の使用を止められるはずだと。


今までそんな自覚症状なかったが?



使う魔法もおかしいのに、欠乏症になる段取りも変なのか。



――それにしても、あの瞬間の無力感。あれをもう一度味わうのは、ごめんだな。



「そんじゃ、安静にしてろよ」


「おお、助かる。さすが勤勉家」



笑いながらそう言うと、那智は苦笑いを返して部屋を出て行った。




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