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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第11話 魔力の過剰使用


一歩、一歩と後退する足に合わせて地響きが鳴る。


二十二頭もの鹿が後ろ歩きしている……なんとも不気味な光景だ。


魔法で強制的に動かしているけど、鹿たちに無理をさせていないだろうか?



雨が強くなり、もやで視界が悪い。

ちらと、俺のカッパにしがみつくお嬢ちゃんに視線を向ける。


……この子、大丈夫か?

カッパは着ているけど、脚が剥き出しじゃ風邪を引くかもしれない。


ソラも連れてこなければよかった。

こんなにめんどくさい案件になるとは……。



「大変な現場に連れてきてごめんね」



雨音にかき消されないよう、少し声を張り上げる。


簡単に思える仕事ほど、油断しちゃいけないな。今後は気をつけよう。



「いえ。これも貴重な経験です」



気配り上手の彼女に心の中で拝み倒しながら、目標との距離が離れないように速度を上げる。



後ろに向かって歩いていた鹿が、町からそう離れていない山の麓で足を止め、みるみる縮んでいった。


その途中でオオツチ支部とミカヅチ本部の組合員が集合し、事の成り行きを見守っている。



「よう、ユウナ。すげえなこれ」



別の場所にいたらしい那智が合流する。



「まあね。それより、このあとどうなるか……」



何か証拠が出ればいいのだが。



鹿が完全に元通りになった瞬間――足元がぐにゃりと歪んだ。


体が傾く。


力が入らない。



「え……?」



受け身も取れず、そのまま地面に倒れ込んだ。


顔が冷たい。


寒い。


腕が動かせない。



なんだ……なんで?

やばい、動かない。動けない……!



「わっ! ユウナ?」


「利他さん!?」



脈打つように鋭く、断続的な痛みが頭に響く。


――痛い、痛い、痛い。


息がうまくできない。



この症状、最近覚えがある。


たしか……ああ、そうだ。校長室でルネを召喚したときか。



「魔力欠乏症か……!」



光癒みつゆの魔導士が低くつぶやく。



「誰か、こいつ頼む!」



何人かの組合員が駆け寄り、俺の体を抱き上げる感覚があった。


ああ、だめだ。



頭の奥が霞がかるように、意識が遠のいた――




***




目を閉じている間に着いたのは病院で、一人用の広い病室に入れられた。


部屋間違ってない?

金持ちが使う所だろ、ここ……いや、それどころじゃないか。そんなの気にしていられないくらい、本当にやばかったんだな。



那智が勝手に事務室に侵入し、空き部屋を探し出していたのには驚いた。医師や看護師は避難していて院内にはいないらしいから問題ない、と。


現在、病室には二人だけ。

彼が俺の鎖骨辺りを指で触れ、魔力の残量を調べている。



「……よく生きてんな、こんな状態で」



那智の眉がきつく歪む。


そんなにまずいの?


とりあえず頭痛が治まる程度まで魔力を回復してもらい、ついでに身体の異常も調べてもらった。



「低体温症までにはなってないけど、体温がやや低い」



那智が乱暴に毛布を放り投げてくる。



「仕事はこっちで片付けておくから、さっさと着替えて寝てろよ」


「……那智って、たまに優しいよな」



「いつもだろうが」と、頭を軽く叩かれてしまった。



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