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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第10話 頂への門出


ずっと、自分のやり方が正しいと思い込んでいたのかもしれない。


本当に、そんな単純なことで魔法は発動するのか?


でも、今はやるしかない。



そういえば、高校の頃……同級生が魔法を使うときに、恥ずかしい技名を叫んでいたのを思い出した。

「メテオ・ブレザー!」とか叫んでいて……ブレザーって上着のことだよね?


あれが嫌で、俺は言葉に出すのを諦めたんだった。あんな風に言わないとだめなのか?と。


だけど、彼が技名を叫んだとき、いつもの数倍はある炎が一気に立ち上がった。本当に出るのかよ、と感心したのを覚えている。



――さて、覚悟は決まった。



視界の端から端まで数えて……十八、十九……二十二頭。

大人も子どもも関係なく暴れまわる四足の影。



鹿の近くには魔導士がいる。彼らは様々な属性の魔法を駆使し、攻撃の手を止めることなく攻め続けていた。


――この言霊が、味方の魔導士たちにだけは作用しませんように。



「こっちを見ろ」



静かに、呟いた。


背の高い建物が崩壊したのを皮切りに、すべての鹿の動きが止まった。正確には、こっちに視線を向けようとして止まったようだった。


動物からの無言の圧力は、背筋に氷を這わされたようで、呼吸すら浅くなる気がする。


今にも飛びかかってくるんじゃないかという恐怖で思わず拳を握った。



雨が滝のように傘を叩く。重くなった和傘の柄が、手のひらに食い込んだ。


微動だにしない鹿から目を逸らせないまま、息をひそめる。


次の魔法で決めよう。

対象は、オオツチ町と巨大な鹿だ。



「――原点回帰」



世界が一瞬、音を失った。

魔導士たちの攻撃も止まり、雨音さえ遠くなった気がした。



次の瞬間。



崩れた建物が逆再生のように立ち上がり、砕け散った壁が元通りになっていく。

巨大な鹿たちも、まるで時間が巻き戻るかのように後ずさっていった。


巨大化される前の時点まで戻せば、原因がわかるのではないかと思い魔法を発動したが、うまくいったようだ。


人より魔力が多い自信はあるけど、いつまで持つかわからない。急がないと。



建物から飛び降り、みんながいる場所に降り立った。



「ユウナ、あんた何したの? 町が……」


「あとで説明するから。陽菜は、組合員と合流!」



俺の声に、陽菜が一瞬驚いたように目を見開いた。



「……わかった!」



彼女の背を見送り、ソラとお嬢ちゃんを和傘に乗るよう指示を出す。



「……行こう。終わらせるために」



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