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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第8話 氷の魔法


「うわっ……あれって、鹿ですか?」



怯えた声を出す彼女と同じ方向に視線を向ける。その先には、巨大な鹿が建物に角を突き立て、崩れかけた壁を蹴散らしていた。



「そうみたいだね」



巨大うなぎを一度見てしまえば、巨大な鹿が何匹いようが驚きはしない。


初見の彼女は目を見開いて立ち尽くしている。

対してソラは「鹿って食べられるの?」と、のんきなものだ。


……まったく、食への情熱だけは変わらないな。

猫って、鹿食べても平気だったか……?


いや、人語を喋る時点で普通の猫じゃないか。



怪獣はどれも見上げるほどの巨躯で、五階建ての建物くらいはある。雄の鹿は太い角を振り回し、雌は足元を削るように跳ね回っていた。


あの大きさなら、もっと遠くから存在に気づけたはず。

なんで町に来る前に対処しておかないんだ……まったく。



「さて、二人でも探すか」


「なんでそんなに落ち着いていられるんですか……?」


「二回目だからねえ……」



とりあえず、友人たちは鹿の近くにいるだろうと足を進めたとき、薄いガラスが割れた音が聞こえた。

視界の右側、突然氷が剣山のようになって現れた。


――あれは陽菜の魔法だ。


あざやかに、一瞬で三匹の鹿を氷漬けにしてしまった。本当に出番なさそう。



お嬢ちゃんに急かされ、小走りでその場へ向かった。

氷山に近づくにつれ、肌を刺すような冷気がまとわりつく。


あまりに寒く、吐く息は白い。降っている雨が氷の冷気に当てられ、その周囲だけあられになっていた。



これだけの魔法を発動させた人物は、全身を覆える長さのカッパを着て余裕そうな表情で立っている。



「おーい、陽菜ー」


「あ、ユウナ! おそーい!」



朝はゆっくりしたくて汽車の時間遅らせたからな。叩かれそうだから黙っておこう。



「陽菜さん、おはようございます。氷魔法すごいですね!」


「優香ちゃんも来たんだ! ありがとねー」



「それ前買った服だよね?」と、きゃあきゃあ盛り上がっている二人に向かって咳払いした。



「仕事もうないよね? 建物の修繕に入ろうか?」



周囲の被害状況を見回しながら尋ねる。



「そうでもないんだよねえ。普通に巨大化しただけの動物だったら、オオツチ支部だけでもなんとかなるって」



たしかに。

うなぎ騒動のときはワタツミ支部の面々も手こずっていた。何か能力が働いているのか?


突然上から、割れるような音がした気がして――首を持ち上げ、陽菜が凍らせた鹿を見た。



「危ない!」



咄嗟にお嬢ちゃんを突き飛ばす。



――ドンッ!



氷の大きな欠片が、さっきまで彼女がいた場所に叩きつけられ、粉々に砕け散った。


背筋に冷たいものが走る。あんなでかい氷が当たったら、ひとたまりもない。



氷の表面にピキリとヒビが走り、次の瞬間、内側から蹄が突き上がった。

ガラスのように砕け、鹿が姿を現し再び暴れ出す。



「あの“氷原の魔導士”様の魔法だぞ!? ありえねえ!」


「化け物じゃー!」


「ちょっと!! そこの二人! ふざけてる場合じゃないでしょ!」



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