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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第7話 四足の影


カッパを着せている途中、ソラが思い出したようにぽつりとつぶやいた。



「大きくなっても、うなぎの味は変わらなかったね」



黄色いカッパの帽子をかぶって、少し見上げている表情はどこか誇らしげだ。


……反則級にかわいいな、それ。



「うん。すごくおいしかったよね」



カッパの袖に腕を通している彼女は、そのときのことを思い出しているのか、口元に笑みを浮かべている。



「今日も食べられるやつだといいんだけどなあ」



それは……どうだろう。

巨大な鹿は無理かもしれない。


視界の端では、雨が汽車の窓を容赦なく叩いていた。



「でも……そんな大変そうな現場にわたしが行ってもいいんですか?」


「見学はいい勉強になるからさ。別に戦えとは言わないし」



陽菜がいるから、汽車が着く頃には終わっていそうだけど。


あの人は、笑いながら敵を一瞬で殲滅させてしまうような人間だ。今回みたいな騒動なら、まるで子どもが積み木を崩すように簡単に片付けてしまうだろう。



それにしても……二つ名持ちの二人と仕事するのは久しぶりだ。高揚感で体がふわふわする。


無性に体を動かしたくなり、指先がそわそわと動く。



あと数十分、駅に到着するまで自分を落ち着けるのに必死だった。




***




オオツチ駅に着いた。


煉瓦でできた駅舎を抜けると、すでに人の姿はなかった。


ここは自然が豊かで、喫茶店や個人経営の店舗が立ち並ぶ、都会と田舎の中間のような町だ。


本来なら、穏やかな風景のはずなのだが――山の方を見ると、灰色の煙が上がり、地面は所々えぐられていた。

激しい雨が降る中、遠くで風が吹き、崩れかけた建物が軋む音がする。


雨でもやがかかって見えにくいが、大きな十数匹の四足動物が、蹄を地面に叩きつけながら周りの建物を蹴り飛ばしている様子がわかる。

歩く度に地響きが鳴り、足元近くの古い家はゆらゆらと揺れてそのまま崩壊しそうだった。


被害は前回よりもひどく、規模も大きい。



ただ、今日は陽菜がいる。彼女の前では、凶暴な生き物もただの的にすぎない。


俺のやることと言えば、壊れた建物を直すことくらいだろう。



それでも、何か起きるかもしれないという気配に、体の感覚が研ぎ澄まされていくのを感じた。



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