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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第6話 巨大生物の再来


「黒猫だ。ぼくとお揃いだねぇ」


「本当だね」



一匹と一人がにゃーにゃー言い合っている。


……なんだ、この、のどかすぎる空間。

この二人が揃うと、仕事行きたくなくなる。



見ていて癒されるけど、こういうときほど気を抜いてはいけない。それに、汽車の出発時刻に間に合わなくなる。


水を弾くような服ならまあいいかと思うことにして、全員で家を出た。





雨が降っているから、念のため汽車の中で全員分のカッパを作った。

自分で作っておいてなんだけど、ソラ用の黄色いカッパがかわいすぎる。到着目前、ソラにカッパを着せるのが楽しみだ。



しゅうしゅうと蒸気の音が鳴って、汽車はゆるやかに村を離れ始めた。



窓の外には、霧にかすむ茅葺かやぶき屋根と並木が流れていく。


ふと、座席の正面に座るお嬢ちゃんを見ると、黒猫の格好でそわそわして落ち着きがなかった。



「そんなに緊張しなくても大丈夫。俺も突っ立っているだけの予定だから」


「んー……でも、初めて現場行くので、さすがに……。ところで、今日はどんな仕事なんですか?」



「ああ、仕事内容言ってなかったな。今日はね……狩りだよ」


「狩り?」



「オオツチ町に、巨大生物が出たんだって。陶芸やら絵画やら、いろんな工房がある……あの芸術家の町ね」



その伝統ある文化の町で、巨大生物が破壊の限りを尽くしているというのだ。

ワタツミ街のうなぎ事件の犯人と同一、もしくは模倣犯の可能性があるとのこと。


魔法獣を生み出すのは罪にならないが、元いる動物を魔法で脅かすのは犯罪だ。



今回は数十匹が暴れているとのことで、オオツチ支部、ミカヅチ本部、そしてなぜか俺の三組合同で対応することになった。



もらった手紙を読むと、那智と陽菜も参加していると書いてあった。


まあ、那智は頼れる戦力ではあるけど……仕事が終わったあとに海に沈める。

お嬢ちゃんに変なもの買わせやがって。



汽車に揺られる中、仕事の話を聞いて彼女の表情が固くなった。



「動物が巨大化……ですか……」



そういえば、この子は前回のうなぎ騒動のとき、気を失っていて事態を見ていない。

すでに捌かれたあとだったな。



「あの……うなぎ事件ってなんですか?」



首を傾げていたから、ワタツミ街で起きた事件を説明しておいた。


巨大なうなぎが暴れ、ワタツミ街を半壊させたこと。俺とワタツミ支部の組合員が協力して討伐したこと。


彼女は相づちを打ちながら真剣に話を聞いていた。



「――そんなことが……。じゃあ、あのときの集まりって祭りじゃなかったんですね」



……そうだった。

“本日限定 春のうなぎ祭り”とか言って誤魔化したんだったな。



「まあね。『巨大うなぎがー』とか、初対面の人に急に言われても、なに言ってんだこいつって思われそうだったから」



本当は――騒ぎに気づかず倒れていた彼女を見て、少しだけ不信感を抱いていた。


けど、それももう、今さら言うつもりはない。



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