第5話 猫耳の服
深夜……というか今日の早朝。
誰かの魔法獣が俺の頭を突きながら起こしにきて、手紙を押しつけられた。
目的地と依頼内容、さらに『本日、始発の列車で来てほしい』という旨が書かれたものを。
この仕事に参加する面々も記載されていたけど、俺がいる必要はまったくない。
だからこっちは、ほとんど遊びに行きますくらいの感覚でいる。
なにせ、“氷原の魔導士”がいるのだから。
今日の仕事は、午前中に終わるだろうと予想している。午後から田起こしの手伝いをするはずだったが……あいにくの雨。
お嬢ちゃんが来ないなら、仕事が終わったあとは一人で散策でもするかな、と考えていたところ、彼女は悩んだ末「一緒に行きたい」と言い出した。
どうやら、どんな依頼がくるのか前々から興味はあったらしい。
日向陽菜の活躍を見るだけになりそうだが、お嬢ちゃんは癒しの存在としていてもらおう。
まあでも、二ヶ月前に起きた巨大うなぎ事件と同程度の大きな案件ではある。
念のため動きやすい格好でと伝えると、彼女は体操着を用意し始めたので、ちょっとやめてもらった。
――数分後、ソラと遊んでいると、着替えたお嬢ちゃんが現れた。
その姿にぎょっとして、思わず唾を飲み込んだ。
太ももの付け根が隠れる丈の、ハリのある黒い上着。ポケットの縁は、なぜか金色。
服の帽子部分には猫耳がついている。
問題は下半身だ。
見たこともないくらいめちゃくちゃ短いズボン。左の太ももには、刺繍が施された靴下の留め具が一本巻かれていて――これはまずい。どう考えても男がチラ見する。
なんでそんな、綺麗な脚を惜しげもなく見せてくるんだよ。
俺ですら目を逸らしたくなるのに、ほかのやつが見たらどうなるんだ。
いや、別にやましい気持ちがあるわけじゃない。
ただ防犯上の問題というか、そう、治安的な意味でだ。
ずっと着物を着ている自分が流行とか知ったこっちゃないが、その留め具はあまりよろしくない。
こういう系統は、この子の選ぶ服とはかけ離れている気がする。ということは……
「その服……那智に選んでもらったの?」
「はい。特殊な衣装の専門店に売ってるものらしくて」
春先、友人たちと買い物に行ったときに、那智が強く勧めてきたらしい。
ほかにも、その店で買った服があるとか。まだ見せてもらってはいないけど……。
ちなみに戦闘狂の陽菜は、靴下の留め具を見て「暗器の固定具だ!」と感激していたとか。
……それ、何か勘違いしてない?
「靴下が落ちるのを防止するものだと思ってたので、ああ、なるほどなって」
「その認識で正解なんだけどね」
陽菜は絶対勘違いしているし、那智はあとで海に沈める。




