第2話 クイズの答え
「……そうですね。まず、土に含まれる水分を太陽光で蒸発させ、水蒸気を作ります」
「はい、はずれです」
「違いましたか」
「正解は“何もしない”でした」
「……はい?」
それ……もうなぞなぞでもなんでもないじゃないか。
「土属性魔導士は、雨を降らせたいと思っても、魔法で無理にどうこうしようとしないんだよ。だって、『自分にはできない』って思ってるからね」
「な……なるほど?」
先生の話は理解したつもりだが、腑に落ちない感覚が残る。首を傾げる俺をよそに、先生は続ける。
「つまり、できないことを無理にやろうとしなくていいんだよ。きみは無属性魔法の使い手なんだから」
「まあ、そうですけど……」
みんなと同じ魔法を使うのに憧れがあった。
火や水の魔法がきらびやかに放たれるのを見て、かっこいいと思ったことが何度もある。
自分だって、そんな風にできたら……と。
「ぼくが魔導士になれるとしたら、きみと同じ魔法を使いたいと思うけどね。攻撃も、防御もできる。物体も思いのままなんて、これほど便利な力はないよ」
先生は、にこっと穏やかな笑顔を向けてくる。
……そう言ってくれるのはうれしい。
けど、周りに同じ魔法を使う人がいないっていうのも不安になる。行き詰まったときに相談できる相手がいないから。
一人きりで考え続けるのって――正直しんどい。
誰かに「こうしたらいい」って言ってもらえたら、どれだけ楽だろうと思うことがある。
突然手のひらを打ちつけ、何かを思い出したように「あ、そうだ」と霜月先生が言う。
「利他さん。きみはさっき、雨の降らせ方について、ずいぶん優れた答えをくれたよね。でも、魔法を使うときは、きみみたいに難しく考えている人なんていないんだよ。土の中や空気中の水分を上昇させて冷やして……なんて、いちいち考えながら魔法使う人はいないからね」
え、なにそれ?
雨が降ってほしいときって、『雨よ降れー』くらいしか考えていないってこと?
そんな単純な使い方で大丈夫なのか?
先生はそのまま話を続ける。
「利他さんの場合は……そうだなー」
先生が腕を組み、宙を見上げる。
「属性って枠がないから、逆に“何ができるか”が見えづらいんだろうね」
「……それは、まあ、たしかに」
属性魔法なら想像しやすい。でも、自分の魔法は……?
「でも、きみの力は属性に分けられていないおかげで自由だ。自分から固定観念に囚われる必要なんてないんだよ。周囲の人間が超自然的な魔法を使って活躍していようが、関係ない。利他さんにしかできない魔法があるだろう?」
俺にしかできない魔法……。
「きみは思慮深くて慎重だから、はい、そうですかって素直に受け入れたり、今までのやり方を変えるのは難しいかもしれないね。だから最初は――」




