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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
5章 化物共

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第1話 夢の中


廊下に、銀色の指輪が落ちていた。


どこにでもあるような造り……でも、以前に何度か、霜月先生がこれを左手薬指にはめていたのを見た覚えがある。


校内にある研究室から、誰かが話している声が聞こえる。

そこから生徒が出ていったので、入れ替わりで教室に入り、その場にいた先生にそれを見せた。



「これ、先生のじゃないですか?」



一瞬驚いた顔をしたが、霜月先生は渡された指輪を受け取った。


栗色の短い髪に、丸みのある眼鏡をかけた先生は、見るからに知的な印象を受ける。物静かな性格なのかと思ったら、意外にも口を開けば会話が止まらないような人だった。

それで何度捕まったことか。



「ありがとう。ついさっき落としてね」



生徒に質問されたから、仕方なく探すのを断念したそうだ。



「それにしても、よく誰の物かわかったね」


「まあ……覚えるの得意なんで……」



いらない情報な気もするが、物体を構築する上で、細かいところまで覚えていられるのは便利だったりする。



先生が指輪を引き出しにしまう間、室内をちらりと見回した。

校内の先生の研究室に入るのは初めてだ。


棚に様々な種類の資料が所狭しと並び、図書館と化していた。それでも乱雑に置かれることなく、どこに何があるのかわかるよう、きちんと表記がされている。

机にはガラス製の蒸留装置がうねうねと生き物のように張り巡らされ、まるで机が研究に占拠されたかのようで、筆を置く隙間もなさそうだ。


本業が学者だから、時間があればどこででも研究に励んでいるのかもしれない。



「あ、そうだ。利他さん、ほかの生徒に魔法の使い方聞き回ってるそうだけど、何かあった?」



不意に話しかけられたせいで、一瞬質問の意味がわからなかった。



「え? あー……そうですね……みんなと同じような魔法使えたらなと思って」


「うちの生徒も先生も、みんな属性魔法だからねぇ」



高校には、自分と同じく変わった能力を持っている人間がいるかも……と期待していた時期もあったけど、やはりいなかった。


「なるほどね」と、うんうん頷いたと思ったら、突然にこやかに人差し指をぴんと立てた。



「では、問題。土魔法を使う魔導士が雨を降らせたいとき、何をすると思う?」


「……え?」



思わず間抜けな声が漏れた。


なんだその問題。急にどうした?

土属性の人が雨?


いや、先生のことだ。

どうせ『作者の気持ちを答えなさい』的なやつか、はたまたなぞなぞかもしれない。


……意図はまるでわからないが、適当に答えて怒られるのも癪だし、考えてみるか。

とりあえず、もし俺が土属性魔導士だったら無難に……。



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