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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
4章 調査開始

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第30話 兄の記憶


「魔法ってすごいですね。なんでもできて」


「お嬢ちゃんも練習したら、火で好きなものくらい作れるようになるよ」



前に、俺の魔法とお嬢ちゃんの魔法を比べる実験で、蝋燭ろうそくの形を模した炎を出してもらったことがあったが、ああいうのではなく――花火とか……傷口を焼いて止血したりとか、もっと実用的なものを作れるという意味で。



「じゃあ、たまに庭で練習させてもらってもいいですか?」


「もちろんいいよ。俺も一緒にやろうか?」



属性魔法の発現の仕組みをじっくり見られるいい機会だ。火の玉はまだ無理でも、蝋燭に火を灯せる程度の火花なら、俺だっていけるかもしれない。



「ふふっ。お手やわらかにお願いしますね」



かわいらしい笑顔をくれるお嬢ちゃんにほだされかけていたが――ふと、思い出したことがあった。

火事の関係者である霜月弘清のことを調べるなら、この子に聞くのが一番手っ取り早い。



「話変わるんだけど、お嬢ちゃんってお兄さんいたんだね。どんな人?」



見たことないなと思って、と、そしらぬ顔で聞いてみる。誰に聞いたとかは言わない。



「兄、ですか?」



きょとんとしている。

いきなりの質問が意外だったのかもしれない。お兄さんがいると知っている時点でだめだったかも。


……まずいことを言ったか?


口から出てしまった言葉を取り消すことはできない。ただ何も言わず、相槌すら打たずに待った。



「んー、兄といいますか、兄妹はいないです。一人っ子なので」



瞬間――心臓が跳ねた。



「なっ……あ、そうなの」



……まさかとは思っていた、が。こう、はっきり否定されると、世界がゆっくりと傾いていくようだった。



これで確定だ。


お嬢ちゃんは記憶障害じゃない――記憶を操作されている。



しかし、火事が起こった直前のことを消すのはわかるが、なぜ兄がいた記憶まで消されているんだ?


お兄さんと火事のことを忘れさせることによって、都合のいい何かがあるのだろう。



お嬢ちゃんには「あれ、別の子と勘違いしてたかも」と、笑って誤魔化した。



二人で黙って、咲きかけの花を眺めた。庭に吹く風の音だけが、空気を満たしていた。



――兄のことを調べなければならない。

正確な情報を確実に。


魔導士でないから、一般人の情報から探さないと。


さて、どうするべきか……真実がなんであれ、彼女を傷つけるわけにはいかない。

慎重にやらないとな。



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