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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
4章 調査開始

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第28話 丸見えの眼鏡


続きに目を向ける。


事件当時、研究所にいたのは


霜月清輝、

霜月弘清、

霜月優香、

他研究員十六名。


現場には服や肉の痕跡が一切なく、施設だけが焼け落ちた状態だったらしい。

長女の霜月優香と研究員十名以外の行方は不明。



その次の文に思わず目を見開いた。



――霜月優香に関しては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?



「友達の家にいたって言ってたあれかな?」



ソラが言ったようにそれのことらしく、春日井先生が友人と言われた人物に聞いてきた内容と合致していた。


霜月優香に『丸眼鏡』という魔法道具を使って尋問した結果、心拍、血圧、声の抑揚も安定していたらしい。でも、脳波だけが異常だった。

このことから、上記の考えにたどり着いたと書いてある。



丸眼鏡は、装着した状態で魔力を流すと、相手の頭上に脳波や脈拍、血圧、声紋などの情報が数値として浮かび上がる仕組みだ。

それらの変化を見ることで、嘘をついているかどうかが判断できる。



「丸眼鏡か、懐かしいな」


「課題で作ったやつだね」



ソラの声に、懐かしい記憶が浮かび上がる。


俺が高校一年のとき、『自分が今までやってこなかった魔法を、新たに発動できるようにする』という内容の夏休みの課題が出た。


俺は物体を作り出す魔法が得意だ。だから、今までにない、何か新しいもの……眼鏡型の嘘発見器でも作ってやろうと思った。


……魔法大臣賞なんて、俺には縁のない話だと思っていたのに。丸眼鏡がまさか評価されるとは。

今じゃ支部の必需品扱いだ。



嘘が“丸”見えと、形の“丸”い眼鏡で、丸眼鏡。

……名前すら適当につけたのに。


たしか、自分が課題で提出したものは、置く場所思いつかなくて金庫に放り込んでいたっけ。いつか仕事するときに持っていくか。



調査報告書は、『現在動機を調査中』と締めてあった。



「記憶障害なら、魔術の使いすぎが原因かもな」


「あれだけ大きな研究所を燃やしちゃったくらいだしねぇ」



魔力を多量に使用したせいで記憶が曖昧になった……と考えれば腑に落ちる、が。


それにしては、『友だちの家にいた』なんて、しっかりした内容の話が出てくるのもおかしな話だ。


当時のことは覚えていないとか、誤魔化さずに言ってくれたらよかったのに。

俺なら、何があってもお嬢ちゃんの話を信じた。



「研究所にいたんだから、記憶操作もできそうだよねえ。あそこなら、人体実験の資料があってもおかしくないし」


「あー、たしかに」



……まあ、記憶の操作なんて本気でやろうと思えば、あの研究所ならできただろうな。

だとしたら、見てはいけないものを見たとか、何かやらかしたとか?


本当に、覚えていないだけなら……それで済む話なんだ。


でも、もし誰かが意図的に記憶を操作していたとしたら――お嬢ちゃんの心に踏み込んだそいつを、俺は絶対に許せない。


怒りと同時に、胸騒ぎもする。


人間の魔法では、記憶を弄る術は今のところ存在しない。でも機械なら、あるいは。

それを考えると……霜月先生が、意図的に彼女の記憶を細工した可能性だってあるのだ。

もしくは……第三者からの指示なのか。



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