第25話 支部の爆破
通りすがりが勝手にやったことですからと、俺は丁重にお断りした。
何もしていないくせに、まるで自分の手柄みたいな顔をしている山口さんには、正直納得がいかない。
小さくため息をついて、もう一度ワタツミ支部を見た。
国の建築物を許可なく建て替えたわけだが……どうせオンボロ支部だったし、無償だからあまりうるさく言われないだろう。
「もったいない」と、肩に乗っていたソラがこそっとささやく。
「わかる」
頷いた拍子に、ソラの長いひげが頬に当たって痒かった。
「じゃあ、そろそろ帰りますね」
「あ、ま、待ってください」
立ち去ろうとしたとき、樺谷さんに無理矢理昼飯代を握らされたので、それはありがたく受け取っておいた。
***
ワタツミ駅の近くに出ていた屋台で、海老焼き、烏賊焼き、蟹焼きを買った。
潮風に吹かれながら、こんがりと焼けた小さな蟹を殻ごとかじる。立ちのぼる香ばしい香りと、じゅわりと滲む旨味が口の中いっぱいに広がった。
熱さに舌を少し火照らせながら、その濃厚な甘みを噛みしめる。
手を止めれば、目の前には陽光を反射してきらめく海がある。波が寄せては返す音が耳に心地よく、潮の匂いと炭焼きの香りが混ざり合って、どこか現実感をぼやかしていく。
この組み合わせで酒でもあれば完璧だったのにな。
でも、手に入れた資料に目を通したい。
腹に隠した報告書の写しがちゃんとあるか触って確かめたあと、屋台のおじさんからもらった水を飲んだ。
「大損したな……」
「資料ひとつにしては、ずいぶん高くついたねえ」
俺の横で背筋を伸ばして座っているソラが鼻を鳴らす。
山口さんの口封じのためとはいえ、一軒家どころか一施設を建てたのに無償とか。
依頼だったら相当な額を請求しているところだ。
思いきり息を吐き出し、肩をすくめた。
……もし、報告書の内容が大したことなかったら?
そのときはもう、さっき建てた支部ぶっ壊してやるからな。
いや、それすら手間だから、爆破でもしてやるか。
ちくしょう。本当に、損な役回りばかりだ。




