明日は見えず
朽葉といつもいる喫茶店、相談していことがあるってだけで、気軽に入れない自分がいることに気が付いた。妙に居心地が悪い。
朽葉は相変わらず尻尾をフリフリさせながら、向かいの席に座った。
神妙な顔つきで朽葉が尋ねた。
「それで相談って?」
俺は少し言葉を探して、朽葉に話した。
「自分が酷く惨めに思える。会社のことを考えるだけで、頭痛が止まらないし、上司の面談を終えた後は瞼の痙攣が酷い。早く仕事に戻らないと行けないのに、仕事をしている自分がまったく想像出来ないんだ」
俺は俯いた。こんなのは精神科の先生に話すことだけど、朽葉にも知っておいてほしかった。ただの自分勝手な感情だけど。
朽葉は俺の言葉にうんうんと頷き、やはり下を向いて、
「分かるよ」
と、言った。
朽葉は、ひげをヒクヒクさせながら言った。
「俺も実は人間界でやっていく自信がこれっぽっちもなくなってしまっているんだ。憧れて入ったこの道なのに、悔しいよ。夢が破れたみたいだ。でも、俺はまだ帰る場所があるからいいけど、お前はどうなんだ。仕事。部署移動とか、辞めたりとか出来たりしなのか?」
夢が破れた。
その言葉に胸が押しつぶされそうだった。
「まだ、そこまで考えられないや…」
俺は力なく笑った。
朽葉も力なく笑った。
「そうだよな。俺も、全然先のこと、分かんないや」
そうして沈黙が二人の間を充満した。重苦しくて、息苦しくて、惨めな敗者たちがそこにはいた。




