海で君を想う
会社を辞めてしばらくしてから、俺は海に向かった。
車から降りたら、風が冷たかった。まだ2月だ。それに時刻は夕暮れに差し掛かっていた。これから潮風が一段と冷えるだろう。
それでも、ここに来たかった。
砂浜を踏抜くと、ザクザク音がした。少し、靴の中に砂が入ることを気にした。
水平線の向こうに太陽が見える。もう半分しか見えなかった。
波打ち際の三歩前で腰を下ろした。体育座りして、じっと海見つめた。海は太陽の最後の光を受けながらキラキラ輝いている。
おもむろにズボンのポケットからペンダントを取り出した。冷にもらった奴だ。
目の前でかざしてユラユラ揺らす。これは儀式だ。もう会えない人への最後の手向け。
夕暮れの海を背景に、ペンダントをスマホで撮った。
ペンダントをポケットにしまう。
そのままじっと、海を見つめていた。
太陽が地平線から身を隠すまで。
風は一段と冷たくなった。
家に帰れば、明日が来てしまう。帰らなければならないのに、身体が中々動かなかった。
重い脚撮りで車へ向かう。その時、一陣の風が額をさらった。
上を見上げると、ポツリポツリと星が見えた。
街よりも星がよく見える。
そう言いたい人はもういない、けど。
しんどいことも、辛いことも、楽しいことも、おかしなことも、全部全部背負って。
立派じゃなくても、人間じゃなくても。
ノロノロ歩いていく。
やがて来る終わりの先で、出来ればまた君と、出会う為に。




