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立派  作者: 月蜜慈雨


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日々は精彩を欠く




 最初は、部屋がやけに暗く感じた。

 職場のある都心から電車で一時間の我が家は、駅から近く、近所にスーパーやコンビニ、ドラックストアもある。駅から近いのに、築年数が古いのと、部屋の狭さで家賃も格安だ。

 ワンルームの部屋にある唯一の窓は大きく、陽光が十分に部屋を照らしている。普段は薄手のカーテンをつけていて、邪魔にならない範囲でこの小さな世界は光に包まれていた。




 なのに。




 色彩が彩度を落とすように、柔らかな光は徐々に色褪せていった。

 朝になると頭がぼんやりして、せっかく淹れた珈琲の苦さも楽しめない。まだ眠いのかな、なんて呑気にそう思っていた。

 



 職場に行くと、頻繁に瞼が痙攣した。丁度繁忙期だから、疲れているんだなと考えた。これ乗り越えたら温泉にでも行ってのんびりしようか。そんな計画を立てていた。

 頭痛がするようになった。同僚の田中さんは喉風邪を引いていて、お互い、季節外れの風邪ですかねぇなんて話ながら、頭痛薬を飲んだ。




 夜がなんだか長く感じて、中々寝付けない日々が続いた。そのせいで仕事を遅刻してしまい、睡眠外来に行って睡眠薬を処方して貰った。

 次第に身体が重くなり、少しの行動でも疲れるようになった。駅のホームの階段で疲れ切ってしまう。上がったり、下ったり、歩いたり、ただそれだけのことなのに、上手く出来なくなっていった。




 ある朝、会社に行くために電車に乗った。朝の電車は混雑しているが、この日はラッキーなことに座席が空いていた。

 座席に座って、窓の外の風景や広告をぼうっと見つめる。毎日イヤホンで音楽を聞いていたのに、最近はそれすら億劫になって、ただひたすらベルトコンベアみたいに揺られて目的地まで運ばれる。

 予兆はなかった。少なくともそれまでは。

 ぼうっとしていた心が一気に上昇して、まるで嵐のように身体を駆け巡った。

 気づいたら、涙が溢れて止まらなくなっていた。

 途中駅で降りて、ホームの椅子に座ってじっと蹲っていた。




 会社には、それ以降行けていない。






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