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最高の彼氏 2

 食事のあと、めずらしくモル(にい)が食器洗いをかわってくれたので、わたしはカイトの見送りをすることにした。

「見送りするのはいいけど、あんま遠くまで行くなよ」

「わかってる。さくら公園まで行ったら、すぐもどってくる」

 さくら公園は家の近くにあるお花見スポットとして有名な公園。

 じつは(ほし)(ざと)()にあるすべての公園にはワープ装置がつけられていて、それをつかえばカイトは街の地下にある秘密基地に一瞬でもどることができるの。

「カイト、あしたのデートは台湾スイーツのお店に行こうよ」

「台湾スイーツって、どんなのがあるの?」

「有名なのはタピオカミルクティーだけど、わたしのオススメはQQボールっていうサツマイモのドーナツ。外はカリカリ、なかはモチモチですごくおいしいの」

「じゃあ、あしたはふたりでそれを食べよっか」

 そんなことを話していると、すぐ公園についた。


「カイト」

 どうしてもつたえたいことがあって、わたしは入り口のまえで足をとめた。

「応援できなくてごめんね」

 わたしは人前で、レギラを応援したことがない。

 お父さんが防衛チームの隊長だからってこともあるけど、応援できない理由はそれだけじゃない。

 この街には、レギラを応援した人にひどいことをいったり、いじめたりする人がたくさんいる。大ファンのエイジでさえ、家以外でレギラを応援したことは一度もない。


「ほんとは声に出して、がんばれっていいたい。大きな声で応援してあげたい。でも――」

「ありがとう。その想いだけで、おれはがんばれるよ」

 街灯の白い灯りが、ほほえむカイトの顔をやさしく照らした。


〈レギラは人類の味方で、星里(ほしざと)()を守るために怪獣とたたかってくれているんだ〉


 たくさんの人がそう思ってるし、SNSなんかでもそういった意見をよく目にする。

 けど、それとおなじくらいレギラのことを悪くいったり、信じていない人もいる。

 理由は単純。レギラが怪獣だから。


〈レギラは本能のまま怪獣とたたかっているだけで、人間のことなんて考えてない〉

〈あいつは人間の味方のふりをして、油断した人類をいつか滅ぼそうと考えているんだ〉


 そんな的外れな意見を見るたびに、くやしくて悲しくて、わたしは泣きそうになる。

「この街には、たしかにひどいことをいう人もいる。でも、おれはその人たちのことも守りたいんだ」

 カイトはわたしの手を取ると、それを自分の胸に持っていった。

「おれがサキを好きなように、どんな人にだって愛する人や家族がいる。おれはこの街に住むみんなに、大切な人との時間を過ごしてもらいたい」

 手のひらにつたわる心臓の鼓動は、カイトの「覚悟」の強さをあらわしているみたいだった。

「サキとつきあわなかったら、おれは人間をこんなにも好きにはなれなかった。サキ、おれのこと愛してくれてありがとう」

 カイトにそういわれると、目の奥が熱くなって、またわたしは泣きそうになった。


「カイト、一緒に星を見ようよ」

 なみだを見られないように、わたしは夜空を見あげた。

「カイト、星を見るの好きでしょ。ジャンボコロッケのお礼に一緒に星を見ようよ」

 毎日のように建物がこわれるので、星里(ほしざと)()はほかの街にくらべて灯りの数がすくない。

 けど、そのおかげでどの街よりも星がきれいに見える。

 わたしたちは、少しのあいだ、さくら公園で星をながめることにした。

「ケフェウス座にはガーネットスターって呼ばれる星があって、直径が太陽の1500倍もあるんだ」

 星の話をするとき、カイトの目はどの星にも負けないぐらいキラキラとかがやいている。

 その目を見るのが、わたしは好きだ。


「あ、流れ星!」

 見つけたと思った瞬間、流れ星は闇のなかに消えてしまった。

「知ってる? 見えないだけで、流れ星って1日に2兆個ぐらい降ってるんだよ」

「2兆個って……そんなに降ってるの?」

「うん。だから、おれは空を見るたびに、いつも願ってるんだ」

 空を見あげたまま、カイトはわたしに肩をよせた。

「ずっとサキと一緒にいられますようにって」

 ……わたしが泣いちゃったのはいうまでもない。


(つづく)


次回の更新は9月3日(予定)です。

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