第5話 初依頼は薬草採取
いよいよ!初めての冒険!依頼に!
アランは大丈夫かなぁ??
翌朝――。
王都リュミエールの街並みが、柔らかな陽光に染まりはじめた頃。
アランは荷物を肩に背負い、宿の玄関に立っていた。
「死ぬんじゃねぇぞ、若造! 夕飯、お前の分も残しといてやるからな!」
背後から響くのは、《金の鹿亭》の店主バロスの豪快な声。
アランは振り返り、顔をほころばせて手を振った。
「おう! Gランクの依頼じゃ死ねないぜ!」
その言葉にバロスは満足げにうなずく。
通りにはパン屋の香ばしい匂いが漂い、
水をまく少女の笑い声が朝の空気に混ざる。
屋台の店主たちは準備に追われながらも、顔なじみの客に冗談を飛ばしていた。
どこを見渡しても、穏やかで変わらぬ日常がそこにあった。
“こんな朝が、ずっと続けばいいのに。”
アランは、本当の始まりは今日からだと胸に言い聞かせながら、
希望という名の未来を抱き歩き出す。
陽にきらめく石畳の道を踏みしめ、冒険者ギルドへと向かっていった。
ギルドの扉をくぐると、中はすでに活気に満ちている。
依頼票の棚を真剣な目で見つめるベテラン冒険者たち、装備を鳴らしながら談笑する者、受付に列をなす見習いたち。
剣の鞘が触れ合う音、誰かの笑い声、緊張感をはらんだ足音――。
その喧騒の中、アランは無意識に背筋を伸ばした。
(今日から、俺もこの中の一人なんだ)
奥のカウンターには、昨日と変わらぬ落ち着いた佇まいの女性がいた。
リゼットはアランの姿を見つけると、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。
「おはよう、アランくん。ちゃんと時間通りね。感心、感心」
「もちろん!」
胸を張って答えるアランに、リゼットは小さく笑みを深め、カウンターの下から紙束を取り出す。
その中から一枚を抜き取り、アランの前に差し出した。
「さて、あなたの初仕事。リュミエール郊外の草地で“ヒールリーフ”の採取よ」
「ヒールリーフ……薬草か?」
「ええ。医療用として需要が高い植物。初心者向けの常設依頼だけど――なめてかかると痛い目を見るわよ」
少しだけ声を低くして、リゼットが言葉を続ける。
「最近はモンスターの目撃情報も増えてきたし、薬草の見分けや採取にもコツが要るの。ちゃんと理解して、慎重に動くこと。分かった?」
「おう、任せてくれ!」
力強くうなずくアランを見て、リゼットは満足げにうなずいた。
「ふふ、頼もしいわね。……それともう一つ」
彼女はカウンター脇の扉へ目を向けた。
「今回の依頼は、ギルドの方針で新人同士のペア行動になってるの。安全確保のためよ。そこにいるわ。」
アランが振り返ると、そこには見慣れた銀髪の少年の姿があった。
「……おはよう…」
「お前!昨日の嫌味な魔術師!お前もこの依頼なのか?」
「レオンだ。ギルドの割り振りみたいだが僕は全くもって納得は出来ない。まぁ偶然―ということにしても独りの方が効率的だ、せいぜい足を引っ張るなよ。」
ローブの裾を揺らしながら、レオンはカウンターへ歩み寄ってくる。
依頼票に目を通すと、小さくうなずいた。
「ヒールリーフの採取か……最初の依頼にしては悪くない。採取技術、植物の識別、野外行動の基礎。実地訓練としては妥当な内容だな」
レオンが依頼書を一読し、淡々とそう評価する。
「ただの薬草採りだろ? さっさと終わらせて、昼には帰ってこようぜ」
アランが肩をすくめ、軽く笑ってみせる。
その言葉に、レオンの眉がぴくりと動いた。わずかに不機嫌な気配を滲ませながら、ぼそりと呟く。
「……はあ、これだから脳筋は」
「今なんか言ったか!?」
アランが振り返るが、レオンはすでに視線を依頼書に戻していた。
リゼットは、そんな二人に小さな布袋を手渡した。
「これは採取用の道具一式よ。薬草を痛めない専用のナイフと、仕分け用の布袋。レンタル費用は鉄貨四枚、あとで清算してね」
二人が袋を受け取った瞬間、リゼットの表情がふっと引き締まる。
「初仕事とはいえ、“命を守る”ってことを忘れないで。安全第一、確実に帰ってくること。……わかってると思うけど、もしモンスターに遭遇したら――迷わず逃げるのよ!」
少しだけ視線を鋭くして、レオンの方をちらりと見る。
「それとレオンくん。アランくんが突っ走りそうになったら、しっかり止めてね」
「……善処するよ」
レオンがため息まじりにうなずくと、アランが不満げに口をとがらせた。
「モンスターなんか、俺がボコボコにしてやるぜ!」
「ほら、もうそんなこと言ってる。アランくんは言うことちゃんと聞くのよ!」
リゼットが微笑みを浮かべながら、手をひらひらと振った。
「じゃあ、行ってらっしゃい――アランくん、レオンくん。2人とも初依頼、がんばってきてね」
(アランくん本当に危なっかしいわ。無事に帰ってくるといいけど。)
「いってきまーす!」
「了解。初依頼開始といこう」
ギルドを出た二人は、朝の空気を吸い込みながら歩き出す。
「なあ、ヒールリーフってどんなのか分かるか?」
「見分けは少し難しい。葉の縁に金色の斑点がある。それが目印だ。摘み方にもコツがある。茎の根元を斜めに切らないと、薬効が落ちる。」
「おお、さすが知識派。」
「まぁそのぶん、盾役は任せたよ。」
「矛な!任せとけって!」
そんな軽口を交わしながら、二人の影はリュミエール郊外の草地へと伸びていく。
〜間話〜
タイトル:「新人の面倒は、受付嬢の気まぐれ次第」
(ギルド裏の武具整備室。グランが作業台で斧を磨いている)
グラン「よぉリゼット。今日はどうした、珍しく色っぽ……もとい、真面目な顔して来たな」
リゼット(無言で書類を突き出す)「この新人。アラン・オーガストレイ。あなたに武器の相談、お願いしたいの」
グラン「アラン……ああ、あの金目のガキか。剣の振り方が喧嘩腰で、ちょっと面白ぇやつだな」
リゼット「でしょ? 放っておくと、三日で刃が欠ける未来が見えたから、あなたに押しつけることにしたの」
グラン「押しつけるって、聞きようによっちゃ口説いてるようにも……」
リゼット「してない。あと口説かれてもお断り。熊毛アレルギーなの」
グラン「そりゃ残念。じゃあせめて膝枕でいいから――」
リゼット(無言でハンマーを掴む)
グラン「……ハイ、武器の面倒見させていただきます」
リゼット「最初からそう言えばいいのよ。ほんと扱いやすい熊だこと」
(リゼットが書類を置いてスタスタ去っていく)
グラン(背中を見送りながら)「ったく、あのツンツン娘もよ……たまにド真面目に頼られると断れねぇのがズルいんだよな……」
(ぼそっと呟きながら、アランの剣を手に取る)
グラン「ま、あのガキ……面白ぇもん持ってんなら、ちょっとは付き合ってやるか」
今回も読んでいただき、感謝しております。
薬草採取、頑張れよ〜アラン!
次回は、無事にアランは依頼を成し遂げられるかな?
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