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英雄を夢見た少年は、王国の敵になる ―リベルタス―  作者: REI
第2章 魔道具職人の街と仮面の組織 ラトール編

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第25話 仲間は夜の灯りとともに

前の話しが、重かったなぁ

なんて、今回はアラン、レオン、リィナの3人にスポットを当ててます。

喧噪の酒場を後にし、アラン、レオン、リィナの三人は石畳の路地を並んで歩いていた。

夜風は夏にしては驚くほど涼しく、湿り気の少ない風が、火照った肌をなだめる。

街灯の柔らかな明かりが、三人の影を長く引きながら、ゆらゆらと揺れていた。


リィナが軽やかに肩に手を当て、くるりと二人を振り返る。

「で、あんたたち、宿ってどこ?」


「夜明け亭だ」とレオンが短く答える。


「ふーん」とリィナは気の抜けた声を出し、ほんの少し口元をゆがめて笑った。

「私は夜帳亭なんだけどさ、正直ちょっと遠いし――二人と同じ宿のほうが、何かと便利よね。ほら、依頼の相談とかもすぐできるし」


「いいと思うよ」

アランがにっと笑い、肩をすくめる。

「夜明け亭なら飯もうまいし、女将さんも親切だしな。部屋もそこそこ広いし、冒険者向けにしてはかなり居心地いいぞ」


やがて三人は、街の片隅にある木造の宿へとたどり着いた。

軋む戸を開けると、懐かしい香りが鼻腔をくすぐる。

焼きたての黒パンとポトフの匂い――優しくて、どこか帰ってきたような安心感がある。


「あ……」

思わず小さく漏れたリィナの声には、ほんのわずかな安堵の色がにじんでいた。


宿の中は、灯りが落とされた穏やかな空間だった。

木製の梁と石造りの暖炉。ランプの光が琥珀色にきらめき、いくつかのテーブルでは、冒険者たちが遅い夜食をつつきながら談笑している。

そのざわめきすら、どこか心地よいリズムを帯びていた。


カウンターの奥では、ふくよかな体つきの女将がゆったりとした動作でグラスを拭いていた。

年の割に張りのある声で、「いらっしゃい」と迎えてくれるその姿には、場を包み込むような温かさがある。


「女将さん!」

アランが真っ直ぐに駆け寄った。

「今日から、仲間が一人増えるんだ。部屋、まだ空いてるかな?」


女将は目を細めて笑った。

「もちろん。あんたたちと一緒なら、何の心配もないわ。鍵は……はい、これね」


「サンキュー!助かるよ!」


鍵を受け取ったリィナは、少し照れたように笑いながら、宿の中を見回した。

「へえ……雰囲気いいじゃない。あったかくて……ちゃんと“人がいる”って感じ」

彼女の言葉はふざけた口調ながら、どこか本音のように聞こえた。


三人はそのまま、空いていた窓際のテーブルに腰を下ろした。

古い木の椅子が、きしりと音を立てる。

テーブルには、小さなランプの火が灯され、光と影が静かに揺れていた。


「……でさ」

レオンが黒パンをちぎりながら口を開く。

「バズ支部長って、昔はどんな怪物みたいな活躍してたの? あんな無骨なおっさんでも、英雄だったんだろ?」


「有名でしょ?」

リィナが答える。

「“豪斧のバズ”。Sランクの元冒険者。討伐依頼の成功率は九割を超える。魔獣退治、護衛、要人暗殺の阻止、戦場の指揮まで、あいつ一人で片づけてたって話もあるじゃん。知らないの?」


「ひぇ……」

アランが目を丸くする。

「それってもう、人間っていうより……戦闘兵器じゃないの」


「でも今は、あの通りだ」

レオンは苦笑しながら、器に残ったスープをかき混ぜた。

「人を導く立場になった分、きっといろいろ思うところもあるんだろう」


アランはパンにスープを染み込ませながら、ぽつりと言った。

「実際バズさんには、助けられてばかりだよ。俺が暴走したときも、止めてくれたのはあの人だった」


リィナはその言葉に少しだけ表情を和らげた。

「そうだよね。今あんたがここに入れるのも、“豪斧のバズ”のおかげってわけね」


「そうだな!」

アランは照れくさそうに笑った。


「ま、そのうち……」

リィナはちらりとアランに視線を向ける。

「……あんたもそうなるんじゃない? “無謀のアラン”とか、“爆炎の子猫”とか。いや、“風火の災害”とか?」


「やめてくれ……!」

アランが頭を抱え、レオンが隣でくすくす笑った。


そんな他愛のない会話が、夜更けまで静かに続いていた。

宿の温かな灯りの中で、三人の距離は確かに、少しずつ近づいていた。

本日も読んでいただきましてありがとうございました。

緩急つけてみたくて、書いてみました。

同じ宿に泊まる3人をほんわかと。


、、、書けてたよね?


明日は土曜日!8時、10時、12時でメインの話しが進む予定です。



感想をお待ちしております。

初めての作品なので、厳しい意見もたくさんほしいです。

よろしくお願いします。


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