第22話 忠誠の誓い
今回は、騎士団のお話になります。
キャラが多く登場するのですが、後ほどまとめますので、サクッと読んでもらえればと思います!
今から遡ること、半年前――
神聖リヴァレス王国 王都・白聖の謁見殿。
天井は高く、純白の柱が並び立つ。蒼の紋章旗が静かに揺れ、射し込む陽光がステンドグラスを透過して広間を淡く染めていた。
六つの騎士団、そしてかつて朱猿騎士団に属した残存の騎士たち――総勢六百余名が、威厳を湛えたまま跪く。銀の鎧と佩剣が陽光に応え、その光景はまさに王国の威信そのものだった。
静寂の中央、玉座の前に立つ白銀の甲冑の男。
神聖リヴァレスの筆頭騎士――レグナルト=ディアヴァル。
その双眸は、整列した騎士たちを一人ひとり射抜くように見渡す。
「――本日をもって、朱猿騎士団は正式に解体とする」
低く抑えられた声は、広間の隅々まで届いた。
空気が張り詰める中、決意と痛みがないまぜになった視線がレグナルトに注がれる。
「この決定は、王国の総意にして未来を守るための断腸の策。汝ら、無念と怒りを胸に刻み、剣を折ることなく歩め」
正面に進み出たのは、赤褐色の髪をひとつに束ねた女性――
旧朱猿騎士団の副団長、ゼフィナ・クロスウィンド。
深く頭を垂れると、その瞳はどこまでも澄んでいた。
「……拝命つかまつります。我らが剣は、今なお王の御旗のもとに在り」
レグナルトは静かに頷くと、玉座の左手にいたもう一人の青年に視線を移す。
「アレン・オーガストレイ」
その名が呼ばれた瞬間、隊列の中央にいた青年がきびすを返し、無言で前へ進んだ。
胸に桜虎の紋章を戴く白の鎧が、陽光に花弁のようにきらめく。
(……この役目に、迷いはない)
アレンは視線を伏せ、ひざを折った。
「特別騎士団副団長の命を与える」
「……謹んで拝命いたします」
言葉を告げる声は、震えも揺らぎもなく澄んでいた。
レグナルトは一歩進み、巨躯をわずかに屈める。
その声は冷徹にして、どこまでも静かだった。
「貴様ら特別騎士団は、朱猿騎士団の代わりとなり――」
ひと呼吸、重い沈黙が降りる。
「リヴァレス王国の希望を守ることを任ずる」
広間に、威厳と悲痛が混じり合う空気が降り立つ。
六百の騎士が一斉に頭を垂れた。
鎧の金具がわずかに触れ合い、刹那の音を立てる。
「――皆の者、今一度、王国への忠義を示せ」
白銀の剣が高く掲げられた。
その気配に、緊張が弓の弦のように張り詰める。
「各団長、前へ」
六つの紋章を戴く騎士団長たちが、一人ずつ進み出る。
レグナルトは順にその瞳を向け、問いかけた。
「貴様らの団の存在意義を、今一度示せ」
その声には、千年を刻む王国の歴史の重みがあった。
「桜虎騎士団、団長レオニス・オーガストレイに問う。貴様らの存在意義は?」
金の髪を揺らし、レオニスは静かに剣を抜く。
「――我ら、リヴァレス王国の勇気を守る。剣に誇りを、心に猛りを。美しき力こそ、我らの矜持なり」
「藤鷹騎士団、団長ゼノ・ヴァルトリアに問う」
「我ら、王国の忠誠を守る。空に勇を掲げ、知を風に乗せよ。鷲の眼は、王の望みを見落とさぬ」
「銀蛇騎士団、団長クロエ・シルヴェリスに問う」
「我ら、理性を守る。声なく、影は這う。毒をもって王を護ること、それが我らの誠」
「白牛騎士団、団長グラント・バルモーラに問う」
「我ら、慈愛を守る。民の盾となり、大地に根ざす。我らの忠義、動かざるが如し」
「黒亀騎士団、団長アスタリオ・オルタークに問う」
「我ら、忍耐を守る。静かに、しかし決して退かぬ。この城こそが、忠義の証」
「金馬騎士団、団長エルディス・ガルデオンに問う」
「我ら、献身を守る。蹄音は風となり、戦場に轟く。我らは走る忠義なり」
最後の声が止むと、広間は再び深い沈黙に満たされた。
(これが、王国を支える矜持――)
アレンは胸の奥に、震えるような責任の重みを感じていた。
レグナルトは剣を下ろし、低く告げる。
「――よろしい。その存在意義を貫け」
白銀の外套が翻る。
王国の守護者たちに、確かな誇りの灯がともる。
「各騎士団の団長、副団長は残り、会議室へ。その他の者は各自任務に戻り、励むがよい」
白い陽光が広間を満たす中、
騎士たちは静かに立ち上がり、それぞれの道へと向かっていった。
――その背にあるのは、王国と民への尽きぬ忠誠。
誇り高き騎士団は、この日も歴史の中に旗を掲げ続ける。
本日の17時に次の話を投稿してます!
今回は騎士団のカッコいい場面を書いてみたかったんですがどうでしょうか?
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