第3話 属性魔法の可能性
注目はレオンですよね!魔力どんだけあるかな?
リゼットが、透き通るような水晶球と、古めかしい魔力測定器を取り出した。
「じゃあ、まずは属性検査ね。水晶球に手をかざして」
アランが一歩前に出る。
緊張の面持ちで、水晶球の上に手を置いた。
――じんわりと、風が流れたような感覚。
球の中に、淡い翡翠色の光がふわりと揺れる。
「……風属性かしら。でも反応は薄いわね。素質は――ごくごく低いわ」
検査官があっさりと言い放つ。
その瞬間、アランの目がぱっと見開かれた。
「え、でも、今……風って……! じゃあ、オレ、属性魔法使えるのか!?」
まるで宝くじに当たったかのような声だった。
検査官は、半分呆れたように肩をすくめる。
「……理論上は、ね。属性反応が出るのはおおよそ百人に一人。
でも、その中で魔法として『使いこなせる』のはさらにごく一部。
ましてあなたの反応の薄さじゃ、風を巻き起こすどころか、微風を起こすのがやっとでしょうね」
アランは、ほんの少ししょんぼりした。
「そっか。でも、ゼロじゃないってことだよな!」
それでも、どこか誇らしげだった。
「次、君」
レオンが無言で進み出ると、水晶に手をかざす。
すると、球の奥に鋭い蒼色と深い紫が重なって現れ、まるで凍てつく夜のような輝きを放った。
「氷と闇。二属性。かなり濃い反応ね。ダブルって珍しいわね。期待してるわ」
「…前と変わらずか」
レオンが一歩引くと、すでに興味を失ったような顔をしていた。
次に、魔力測定器が準備される。
真ん中に針がひとつ、振れ幅で魔力量を示す仕組みらしい。
「じゃあ、これに手を」
アランが恐る恐る触れると、針がピクリと震え――
ぶるぶるぶるっ
と不規則に上下に揺れたあと、針はふっと元の位置に戻った。
「……?」
「……あら。んーかなり低いわね。魔法使うのは夢のまた、夢かもね 」
「ま、元々、使えるとは思ってなかったんで!そのうち使えるようになるでしょ!」
アランが気にしてない様子で笑って引っ込む。
「次、レオンくん」
検査官の声に応じて、レオン・ヴァルトハイトが静かに一歩進み出る。
無言のまま、測定器に手を置いた。
針は、一瞬だけ微かに震えたあと――
ゆっくりと、だが迷いなく、ぐんと高い位置まで上昇していく。
それはちょうど、限界値の手前で止まった。
「……これは、かなりの魔力量ね。上位魔術も視野に入るわ。習熟さえすれば、だけど」
検査官が感嘆まじりに言うと、レオンはただ小さく肩をすくめた。
「……そう評価されても、あまり意味はないさ」
そう言って、ちらりとアランへと視線を流す。
その眼差しは冷たくもなければ、嘲るでもない。ただ――距離があった。
「僕の魔術体系は、一般的な理論には基づいていない。
“零域式”は魔力量よりも、魔力の波長制御に全てがかかっている。
数値が高かろうと、無意味なものに意味を与えることはできない」
一拍の静寂。
アランがぽかんとした顔をすると、レオンはそっぽを向いた。
「……ま、バカには扱えないってことさ」
その言葉は皮肉ではなく、ただの事実だった。
場の空気に微かな緊張が走る。
アランは一瞬、言葉を飲み込んだ。
けれど、悔しさを滲ませながらも、すぐに笑ってみせる。
「はは、手厳しいぃ」
空気がピリッと張り詰めた。その中で、リゼットが帳面をぱたんと閉じた。
「――以上で検査は終了。」
「さぁ、正式に登録するわよ。冒険者証を作るから、上の受付に少ししたら来なさい」
リゼットの言葉で場がひと段落し、4人は通路へ戻る。
「ふぅー、終わったぁ……!」
アランが肩の力を抜いて息を吐いたそのとき、背中をバンバンと叩く大きな手が伸びてきた。
「おいおいおい! 兄貴ぃぃぃぃ!! さっきの攻撃、マジでシビれたっす!!」
「……え? に、兄貴?」
勢いよく絡んできたのは、先ほどゴーレムをぶん殴っていた獣人の少年・ドランだった。
獣耳がピコピコ動いており、顔を真っ赤にして目をキラキラさせている。
「だってあの踏み込み!剣の振りの速さ!超カッコよかったっす!!」
「ま、まあ、ありがとう……? でも、兄貴って……」
「もう兄貴は兄貴っす! 俺、ああいうの憧れるんすよ! 前に出てバチンってやって、ぐおおって吠えて——」
「いや、吠えてはねぇよ」
「ちょっとおの魔術師は気に食わなかったようだけど、俺は兄貴の突っ込み好きっすよ!ああいうのが戦場じゃ頼れるんすよねぇ〜!」
「そ、そうか……」
急に距離感ゼロのテンションに押され、アランはやや困惑しつつも笑ってしまった。
「でも、ありがとうなドラン。お前のパンチも、マジですげぇと思ったよ。まさに野獣って感じだった!」
「うっしゃあ!! やっぱ兄貴わかってるぅ!」
ぐっと親指を立てるドラン。まるで犬のように尻尾が見える勢いで喜んでいる。
「これから一緒に依頼とか出るかもっすよね! そのときは俺、兄貴の背中守りますから!」
「お、おう。頼もしいな!」
アランが少し照れくさそうに笑ったそのとき、ドランがふと前足……いや、腕をぶんぶん振り回しながら言った。
「てか兄貴、今日の試験じゃまだ全力出してないっすよね!? 今からちょっと、手合わせとかしてみません? 軽〜くでいいんで!」
冒険者証の作成までの時間潰しに手合わせをする2人に近づく影、、、
〜間話〜『お茶と砂糖』
(ギルドの休憩室。アランが紅茶を入れている)
アラン「レオン、砂糖いる?」
レオン「……三つ。」
アラン「甘党かよ!」
レオン「……疲れるんだ。お前と一緒にいると。」
アラン「それ褒めてる!? けなしてる!?」
レオン(くすっと笑って)「どちらでもない。ただ事実を述べただけだ。」
読んでいただきまして、感謝です。
レオンは、高慢で生意気、なんかムカつく奴だ。
でもツンデレだったりして。
次回、忍び寄る影の正体は??
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