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Libertas リベルタス ―困難を超え、自由を駆け抜ける少年の冒険―  作者: REI
第1章 「旅立ちの微風」王都リュミエール編
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第25話 「朝靄の果てに」

白い朝靄が晴れ始め、王都リュミエールはようやく、麻薬騒動という悪夢から目を覚ましつつあった。


 市場の露店には人が戻り、広場には子どもたちの笑い声が響いていた。神殿の裏手では、薬師や神官が傷ついた市民や中毒者の治療に追われている。

 

 ヒールリーフ──回復薬の材料であるその薬草の価値は跳ね上がり、今では銀貨数枚でも手が出ない代物になっていた。


 その混乱の影で、アランとレオンは石畳の通りをゆっくり歩いていた。

 道行く人々が話すのは、銀蛇騎士団の手柄ばかりだった。

「騎士団が地下の密売組織を壊滅させたらしいな」 「さすが、銀蛇様だ」 「怖いけど頼りになるよ、あの人たちは」

 そんな声を聞きながら、アランは手にした袋を振った。中には、わずかな小銭が入っているだけ。


「はあ……。報奨金って、これかよ。新しい剣どころか、晩飯代にすらなりゃしねぇ」


 ぼやくアランの隣で、レオンは肩をすくめた。

「金のためにやったんじゃないだろ?」


「そうだけどよ。でも……なんか、こう……釈然としねぇんだよ」


 街が平和を取り戻しているのは嬉しい。人々が笑っているのも、確かに救われた心地がする。  


 けれど、その陰で、真実はねじ曲げられ、騎士団の手柄として処理された現実があった。


 ギルドではノランが工具を握り潰しそうな勢いで唸り、イリナは露骨に舌打ちをしていた。


「何が『銀蛇がすべて解決した』だ。あの二人がいなきゃ、街はどうなってたと思ってるんだ」


 受付嬢のリゼットは、アランたちのことを思うと何も言わずに小さく頭を下げた。

その目には感謝というより、悔しさと、騎士団への不信が滲んでいた。


 アランは石畳の上で立ち止まり、空を仰いだ。

「正しいことをしても……この世界は変わらないのか?」


 ふと、手の平が疼いた。  カストールの剣を受けた時の痛みが、まだ肉に残っている。


 レオンはしばらく沈黙し、そして視線を前に向けたまま言った。


「……いや。ほんのわずかだが、いい方向に向いたんじゃないか?  お前の無鉄砲さも、たまには役に立つ」



 アランは口元に笑みを浮かべた。風が、彼の髪をふわりと揺らす。


「なら、もっと強くなって……もっと大きなことをしてやる。世界に名前が轟くような! もちろんレオン、お前も一緒だぞ」

 レオンは肩をすくめながら、微かに笑った。 「……仕方ないな」


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