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英雄を夢見た少年は、王国の敵になる ―リベルタス―  作者: REI
第4章 救国の片鱗 森の都エレジア編

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第9話 旅路は始まる

夜更けの〈金の鹿亭〉。

 二階の一室に戻ると、窓から入り込む街灯りが、木の床をやわらかく照らしていた。

 机の上には地図とメモ、ボリスの置きっぱなしのハンマー、リィナの投げナイフ――雑然とした空気が、妙に落ち着く。


「おかえり、アラン」

 ベッドに腰かけていたレオンが、読んでいた本を閉じた。

「顔が固いな。親父にでも説教でもされたか?」


「まぁ、似たようなもんだ」

 アランは軽く笑って、深呼吸をひとつ。


「リヴァレスの東側に行く。」


 一瞬、空気が止まる。

 リィナがカップを持ったまま瞬きをし、ボリスは口にしていたパンを落としかけた。


「はぁ!? 東側!? まさか隣国のエレジアじゃないでしょうね?」

「まさかじゃなくて、まさにそれ」

「また面倒ごとでしょ、それ」リィナがため息をつく。

「今回は巻き込まれたってより、選んできたって顔だな」レオンがにやっと笑う。

 アランは苦笑して肩をすくめた。


「……まぁ、そうかもな。王都の情勢が怪しくなってる。俺にしかできないことがあるらしい。危険かもしれない。だから無理に――」


「はい出た、いつものやつ」ボリスが遮った。

「危険かもしれないからついてこなくていい、って顔が言ってる」


「いや、そんなつもりじゃ!」


「お前が行くなら、俺たちも行く。そういう話だろ」

 レオンは淡々としながらも、口元にわずかに笑みを浮かべた。


 リィナは肩を竦め、カップを置く。

「しょうがないわね。」

「エレジアまで行くなら――エルフいるよね?可愛い子、多いかな?」ボリスが空気を柔らげる。

「私は大賛成よ!ランク試験なんていつでも受けられるし!」


「お前ら……」アランは呆れたように頭をかいた。


 だが、胸の奥の重さが少しだけ軽くなるのを感じた。

「ありがとう。ほんとに……ありがとう」


 レオンが小さくため息をつく。

「まったく。お前が無鉄砲なのは病気だな」


「それ、褒めてるのか?」


「もちろんだ」

 その即答に、思わずアランは笑い声を漏らした。


「じゃあ、出発は明後日の明け方だ。明日は準備とギルドの手続きに回る」

「了解!」ボリスが拳を握る。

「護衛任務があれば俺が話つけとく!」

「助かる」


 リィナは肘を机につきながら、からかうように言った。

「ほんと、あんたらしいわね。危ない橋を渡るときほど楽しそうなんだから」

「だってさ、ひとりじゃないって思えば――なんでも行ける気がするんだ」

 アランの言葉に、レオンが小さく息を吐いた。

「……まったく。そういう無根拠な自信だけは、本当に強い」

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